医療界全体の女性医師の割合は年々増加し、29歳以下ではその割合が約4割に達しています。女性医師がキャリアを継続し第一線で社会貢献を続けられるか否かは、単に女性医師の個人的な問題ではなく、日本の医療の存続に関わる問題であるといえます。しかし、これまで社会通念上、育児や家事、親の介護など家庭での役割のほとんどを担うことを求められてきた女性が、結婚・出産後も男性医師と同じ量の仕事を続けていくことは非常に困難であり、特に外科系では出産後そのキャリア継続を断念している女性医師は少なくありません。
このような視点から、日本小児外科学会では平成24年に男女共同参画のためのad hock委員会が設置されました。喫緊に委員会が取り組まなくてはならない問題は妊娠・出産後の女性のキャリア継続支援ではありますが、家事、育児、介護、社会活動などに関しては、本来女性と同等に男性も参画すべきものであり、小児外科医全体の過重労働そのものを軽減しなければ、真の男女共同参画の実現は不可能であるという考えに基づき、委員会名を「ワークライフバランス検討委員会」としました。
なお、平成25年度からは常置委員会となり、会員のキャリア継続支援、ワークライフバランスの適正化を目的とする活動を行うものです。 ~ 小児外科学会会員の方はこちらへ
第1回講演会 厚生労働事務次官 村木厚子氏をお迎えして
第29回日本小児外科学会秋季シンポジウム・PSJM2013では、第1回講演会を開催しました。講師には、厚生労働事務次官 村木厚子氏をお迎えし「あきらめない―仕事も家庭も」という演題でご講演頂きました。
村木氏は30年以上にわたりキャリア官僚として労働時間短縮や男女雇用機会均等法の定着、男女共同参画基本計画の策定、育児・介護休業法の改正な ど、ワークライフバランスに関する重要な案件に携わってこられ、また、ご自身も二人のお子様の子育てをしながらキャリアを積んでこられたワーキングマザー でもあります。男女共同参画社会の理念や国の施策についてご自身の経験なども交えながらお話しいただくことで、男女共同参画、ワークライフバランスについ ての会員間の理解が深まったものと思われます。ご参加頂いた会員から頂いた感想をいくつかご紹介します。
・一人一人の意識にワークライフバランスの重要性を根付かせていくことが重要だと思いました。(30代 男性)
・仕事と家庭を両立されて活躍されている先生のアドバイスはとてもリアルであり、たいへん心にひびきました。私も将来仕事を続けて頑張ろうと思えました。(20代 女性)
・現在育児中であり、今後臨床へ復帰するに向けて大変励みになりました。(30代 女性)
・子育てを言い訳にして安易な方向へ進むイメージが膨らんでいたけれど、戻る覚悟をもって、いつしかこの“借り”はきっちり返せるよう頑張ろうと思った。(30代 女性)
・日本は女性に高等教育を行っているのに、その資源(労働力)を使用しない珍しい国という指摘が印象に残った。(40代 男性)
・妻の職場に“借り”を返していかなければならないと思いました。(30代 男性)
・「雇用の質」を向上させるマネジメントに取り組みたいと思う。(60代 男性)
・女性も同じように働く場になるようにしたい。(60代 男性)
・女性医師の支援法の一部がわかった気がします。特に“貸し借り”のお話が参考になった。(60代 男性)
多くの先生方が印象に残った言葉として「職場との“貸し借り”の感覚を忘れないように」というメッセージがありました。これは、 「妊娠・出産・育児・介護中のフルに働けない時期は職場は支援しましょう。本人も頼りましょう。だけど必ず現場に復帰して、その間に受けた支援に対する “借り”をきちんと“返す”という意識を持ちましょう。当然と思わないで。借りたままにしないで。」という村木さんからのメッセージでした。
20代、30代の女性医師にもこのメッセージがしっかり伝わったこと、また、子育て中の妻をもつ30代男性が妻の職場への“借り”を意識されたこと、管理職にある60代男性が職場環境や女性のキャリア支援について積極的に検討されていることを知ることができました。