マイアミ大学はピッツバーグから移られたTzakis先生が1994 年から移植のプログラムを開始し,成人の移植もおこなわれていますが小児の移植が有名で年間25~30例の小児の移植が行われています.加藤先生は肝・消化管移植部門の助教授,小児移植のDirectorで小児の移植手術を数多く執刀されています.加藤先生を中心とする小児移植チームは毎朝ミーティングで治療方針などを検討したあとICUや移植のユニットなどを回診します.移植後の拒絶など大変な患者さんもいますが,特にマイアミが得意とする小さな子どもの多臓器移植も数年前までは成績もよくなく術後管理も大変だったそうですが最近ではほとんど死亡症例もないということですからその術後管理のノウハウについてはとても勉強になります.小腸を含む移植の術後には頻回に内視鏡検査をおこなうので一日に何件もあり数多く見学することができました.移植以外の手術も肝前性門亢症に対するシャント手術や肝腫瘍に対する肝切除など小児外科医にとって勉強になる症例がたくさんあります.HCCの肝3区域切除後の残肝再発に対し残った左葉外側区域を全摘しex vivoで腫瘍を切除してauto-transplantするというすごい手術もありました.移植手術で最も印象に残っているのは体重4kgの新生児ドナーから1歳体重8Kgの腹壁破裂から超短腸症,肝不全をきたしたレシピエントへの多臓器移植.この手術ではharvestの助手をさせていただきました.腸間膜デスモイド腫瘍に対する小腸のauto-transplantは2ヶ月の間に2例あって,うち1例は切除した自前の腸管は結局移植することができず脳死ドナーからの肝なしの多臓器移植になったのですが,この際なんと腹壁も同時に移植されていました.マイアミではこの腹壁移植をすでに数例に行っておりその成果はLancetに掲載されています. 2ヶ月という短い期間でしたがたいへん貴重な経験をさせていただきました.またこの留学の後に加藤先生のご協力のもと当科で国内7例目の生体小腸移植を実施できたことを大変うれしく思っております.