小児外科医のライフスタイル

29歳女性(卒後5年目)

初期研修終了後の2年間、一般外科で基本的な知識や技術を学び、平成25年春より小児外科医としての研修が始まりました。学生の時から外科に興味があり、特に病院実習後は小児外科医になろうと決めていましたので、スタート地点に立ててうれしい気持ちでいっぱいです。実際の勤務としては、毎朝8時15分からの集中治療科をはじめとした複数の科によるICUの合同カンファレンスから始まります。その後に小児外科チームで病棟の回診をし、上級医と治療方針の決定・確認を行い、チーム全体で情報を共有しながら患者さんの治療にあたります。手術日は担当の症例はもちろん、時間が許せば病棟仕事と平行しながら手術を見学しています。よほど長時間の手術がなければ夕方には手術が終了し、夕方のICUカンファレンスと、病棟をラウンドしながら上級医への一日の報告を行います。手術日以外では日中に検査や病棟処置を行います。一般外科と違い、入院患者さんの数自体は多くないため、日中に患児と接する時間や勉強する時間を十分に取れることが多いです。

私は結婚して4年目になり、現在外科医の夫と一緒に暮らしています。出勤時間が違うため、朝食を一緒にとることはありませんが、仕事が終わると連絡を取り合い、帰宅時間をあわせて夕食を一緒に食べるように心がけています。帰宅時間の遅い方にあわせて医局で勉強をしたり、時には早めに帰って夕食を作ったりといった生活です。共働きのため当直の日程も可能な限りすりあわせ、仕事以外の家庭の時間も大事にしています。

もちろん通常の予定とは異なり、小児外科では緊急手術や処置などが必要となることも多々あります。その場合は深夜まで帰宅できなかったり、休日出勤となることもあります。一時的に忙しくなりますが、緊急手術となるような症例や新生児症例では学ぶことも多く、集中して研修に励むよう心がけています。夫婦二人ともこういった緊急対応が必要となることがありますから、互いの仕事内容については十分に理解し、家事を分担するなど支えあうようにしています。普段は仕事と同様に家庭生活も両立できるように心がけ、緊急時には集中して働くといったメリハリのある充実した研修生活を送っています。

29歳男性(卒後5年目、小児外科専攻2年目)

小児外科医のライフスタイル

朝は、業務の始まる1時間前に病棟に出勤します。少し早めに行くのは、採血やルートキープなどのためにでもありますが、昨夜から今朝にかけて患児の状態を少しでも早く把握し、少しでも早く対応するためです。そうするのと同時に、1日のDutyを再確認しておきます。小児外科で診る疾患の特徴として予定外であることが挙げられ、そういった予定外のシチュエーションでは、仕事の優先順位をつけ、迅速に対応していくことが求められるからです。やれることはやれる時にやっておくというのが、私の姿勢です。

業務、これはすなわちチームでやる仕事ということですが、これには、回診、手術、消化管造影などの透視下の検査、カンファレンスなどが挙げられると思います。回診、手術、消化管造影などの透視下の検査はチームで日中に行われます。そして、一日の最後の業務としてカンファレンスが行われます。ここでは、担当医が患児の状況をプレゼンテーションしてチーム内での情報共有を行い、治療方針などを議論します。カンファレンスが終わると、次の日の準備にとりかかります。準備というのは、文字通りオーダーの他、文献にあたって日中の業務中に湧いた疑問を解消するというのも含まれます。小児外科で診る病気の中には一生出会うかどうかといった稀な疾患も意外に多く、1例1例経験したことを記録しておくこともあります。その他、学会の準備をしたり、自分の気になる疾患やトピックに関して、文献を読む時間も作っています。

といった感じで、平日はあっという間に過ぎてしまうのが常で、24時間が短く感じられてしまいます。一方休日は、家族と、時間の流れをよく感じるようにまったり過ごしていることが多いです。2歳の息子と二人で近くの公園まで散歩に行くことが多いですが、遠出することもあります。今は一人前の小児外科医になるために、時間の使い方としては仕事と家庭で7対3になっており、家族の理解に支えられている日々です。

成人領域では治療は確立してQOLを追求する段階にきている疾患も多い一方、小児外科で診る疾患は、で未だ病態のわかっていないものも多く、また治療法があっても満足いく結果が得られてはいないことも多いです。『未だに分からないことがたくさんある』というのは探究心が実にかきたてられます。学生時代のポリクリで、よくわからないけどそれがいいなというので選んだ仕事ですが、今は心から楽しんで仕事をしています。

31歳男性(卒後7年目)

初期研修の後に、2年の一般外科研修を終えて、大学に戻り、卒後5年目から小児外科医の研修を開始しました。
もともと神経再生に興味のあった私は初期研修医時代に見た小児外科の腸管神経再生の研究に非常に惹かれ、大学院で研究に取り組むことを決意し、現在に至ります。

大学院と病棟の掛け持ちは、正直、容易ではありませんでした。通常の病棟業務をこなしながら合間を縫って実験を行いました。小腸移植と肝移植の両方の主治医になった期間は学生のレポート指導、自分の学会発表も重なり、ほとんど寝れない時期もありました。そんな中、患児やその家族から感謝の言葉や手紙が大きな支えになりました。子供から言われる”ありがとう”は僕にとっては格別嬉しいもので、小児外科を選んでよかったと思える瞬間でした。

研究は素人ですからうまくいかないことも多く、つらい時期もありました。しかし、周囲の医師の研究に対する凄まじい情熱、supportiveな基礎のスタッフ、業務を分担してくれているスタッフの先生方とレジデントのみんな、家と子供を守ってくれる妻の協力があり、小児外科医でありながら、父親でありながら基礎研究に没頭しています。そして、いつかこの研究の成果で喜ぶ患児の家族の顔を見ることを楽しみに日々、前進を続けています。

基礎研究に携わったことで、私の臨床の見え方は少し変わりました。正直、今までは目の前に現れた疾患を既存の治療になぞって治療することで精一杯でした。しかし、徐々に既存の治療を超える方法は本当にないのか、どうしたらそこに一歩近づけるかを意識するようになりました。

小児外科は臨床でも研究でも未開の領域が多く、挑戦する気持ちがあれば、非常に恵まれた環境です。この環境は私にとって、最もやりがいのある領域に見えました。再生、機能回復といった成長を伴う小児ならではのフィールドをこれからも楽しんで小児外科医を続けて行きたいと思っています。

31歳男性(卒後8年目)

毎日楽しい小児外科

小児外科の毎日は楽しいことばかりです。幸せなことです。私は医師になって今年で8年目の若手にすぎませんが、きついことはあってもこれまで一度も辛いと思ったことがないからです。

私が小児外科になった理由は単純です。外科医になりたくて小児医療がしたいからです。

小児領域はいつでも温かみと優しさが空間を満たしております。患者さんに優しくご家族への配慮を欠かさないホスピタリティの精神が最も多く見られる診療領域です。対象が子供だからでしょうか、それだけではないかもしれませんが、小児外科医の志と持ち合わせたメンタリティが私の目標であったため、生涯を捧げる診療科に迷う余地がありませんでした。真摯な診療体制と和気あいあいとした診療科の雰囲気、回復した子供たちの笑顔、どれをとっても毎日が幸せであります。

日々の診療できつい時も、病棟に足を運べば、苦しんでいる子供が待っています。一生懸命に治ろうとしています。その姿勢を見ると自然と気力が充填されまた次の診療に移ることができます。

生まれながらにして外科治療が必要な無垢な子供たちに普通の生活をプレゼントできるのは私たちだけです。

患者の未来のスタート地点を預かり、その次世代をも担う重圧を考えたとき、その責任重大さを重々感じるとともに一生を賭して生涯そのモチベーションを維持することができる魅力ある小児外科に感謝をするとともに微力ながらでも貢献できるよう日々、精進させて頂く次第であります。

私を指導くださる全国の小児外科の諸先輩方に感謝するとともに今後苦楽を共にし、切磋琢磨させて頂く同期・後輩・コメディカルの皆さんに御礼を申し上げ、私の言葉とさせて頂きます。

33歳男性(卒後8年目)

研究の勧め

私の研究生活も3年目に突入し、成果の上がらない日々に焦りを感じながらも、手の抜けない実験行程を一つ一つ進めていく毎日を過ごしています。今回、小児外科を志す皆さんの将来選択の悩みに少しでも有益の情報になればと思い、私の現在のライフスタイルを紹介させていただきます。

みなさんは「研究」と聞いてどのようなイメージを思い浮かべるでしょうか。多くの方は、実験室に籠り、社交の場を絶たれ、黙々と実験をこなす暗いイメージをお持ちでないでしょうか。特に理系研究者となると、アメリカ映画で描かれるマッドサイエンティストのような行き過ぎたイメージがよぎるかもしれません。しかし、全くそのようなことはありません。研究生活といっても、当然のことながら研究だけを24時間やっているわけではありません。研究、家庭、そして時々臨床。この3つのバランスを取りながら過ごしています。

まずは研究ですが、当然生活の中心になります。時間が許す限り研究室で実験を行い、暇を見つけては論文を読みます。私の研究では、細胞や動物を使います。例えミクロレベルの小さな細胞とはいえ、生き物です。異なる刺激を与えることで、違った反応を見せますし、少しでも世話を怠るとたちまち死んでしまいます。一つの細胞でも無駄にしないように気を使って取扱い、動物の手術をした時には、患者さんと同じように、気になって朝早く見に行くこともあります。臨床ではヒトという大きな生命を対象としますが、研究ではミクロの世界から生命の不思議を感じ、探究心が湧いてきます。このようにミクロレベルで考えることは、臨床でも大いに役に立ちます。また、研究は興味本位で一人で黙々とやっていても成果が上がるわけではありません。諸先輩医師、技術者、他分野研究者、様々な方からご指導いただき、また毎日のように議論をして、ブラッシュアップしていきます。時には学会やセミナーに参加して、著名な先生方にお話しを伺ったり、他業種の方々と意見を交換し、知識・人脈が広がっていきます。このように医療とは異なる分野の人々と交流し、視野が広がっていくことは研究をすることの大きなメリットです。ですから、研究者=社交性がないというイメージは間違っています。良い研究者は皆さん、人柄も良いです。研究をしていくなかで、こんな重箱の隅をつつくようなことをして何の役に立つのだろうかと思うこともあります。しかし、医学とはエビデンスの積み重ねです。その些細なことが積み重なって新しい治療が生まれるかもしれませんし、時には大きなブレークスルーをおこして、現在の医療をがらりとかえるかもしれません。自分の研究が未来の医療を創り出し、多くの生命を救うことになると思うと、研究生活は希望に満ちたものになります。

研究の次は、プライベートがどうなのか気になるところだと思います。私には家庭がありますが、研究に追われて家庭をほったらかしにするわけにはいきません。しかし、心配は無用です。研究生活では、臨床のときのように急患が来て、予定外に時間がなくなることはありません。計画的にタイムスケジュールを組み立て、時間を作ることができます。ですので、実際に臨床の時より家族と過ごす時間を確保できています。プライベートの時間は、黙々と研究をする生活においては大事な息抜きです。また、経済面が気になると思いますが、こちらも心配はいりません。私は週に2日程市中病院で夜勤などのバイトをして、収入を得ています。ここで一つお話しておきたいのは、こういった場合、小児外科医は非常に重宝されます。なぜなら、小児外科医は小さな子供からお年寄りまで初療を診れますし、夜間の急患で多い外傷や重症患者の対応もお手の物だからです。小児外科は専門性が高い一方で、子供からお年寄りまで、いろいろな臓器を診れるジェネラリストとしての力が発揮されます。学会前などの忙しい時期には、研究とバイトで大変ですが、時間を有効に使うことで充実したプライベートが過ごせています。

最後に少し臨床の話です。研究をしながら、臨床にも携わるかは人それぞれですが、私の場合、専門とする手術や検査がある場合には、参加しています。夜勤のバイトを含め、臨床の感覚を忘れないように、少しだけ臨床にも携わるようにしています。

医学生や研修医の先生方には、研究は身近なものでなく、実態の見えないものでしょう。とりとめもなく、私の研究生活実態を書きましたが、小児外科に興味を持って下さった皆様に少しでも参考になれば幸いです。研究は臨床でのマクロの世界から、ミクロの世界に目を向け、小さなことの積み重ねによる論理的思考力を養うことができます。また、過去の研究成果を還元していく臨床の現場も楽しいですが、未来を創造する研究の現場は日進月歩で厳しい反面、とても刺激的です。

35歳女性(卒後11年目)

私は大学を卒業してすぐ大学の小児外科学教室に入局し、小児外科の研修医として2年間大学勤務の後、3,4年目は一般病院で成人外科と小児外科を学びました。5年目に結婚を機に教室のご配慮をいただき、希望により小児病院外科での勤務となりました。小児病院では新生児からcommon disease、重症心身障害児まで症例は多く、修練医が私一人であったこともあり、ほぼ全症例の検査、手術、管理と、外来まで担当しました。小児外科医としての経験と自信をある程度身に着けることができ、おかげで外科専門医は5年目終了後に、小児外科専門医は7年目終了後に取得できました。しかしその分私生活は主婦らしいこともせず、仕事中心の慌しい日々ではありました。

小児外科専門医取得の目途がたった8年目から約3年半にわたり、小児泌尿器科医として勤務する機会を得ました。小児外科医として、精巣捻転や停留精巣などのcommon diseaseの修練や、膀胱鏡・VCUGなどの検査技術の取得、また泌尿器科的な感覚を身に着けることなどを希望して上司に相談し、研修の機会を作っていただけたのです。実際に働いてみての外科との違いは、まず外科では治療に急を要する疾患が多いのに対し、泌尿器科では経過観察を要するもしくは経過をみることで改善する疾患が多いこと、緊急手術は稀であることがあります。また術後早期から食事を再開でき急変も少なく管理は比較的楽ですが、腎機能や排尿機能、そして生殖機能などについて長期間のフォローアップが必要で、患児のQOLのための細かい配慮は専門科ならではと感じました。一方手術手技としては尿道下裂のような細かい手術から、外科医にはあまりなじみのない後腹膜腔での手術・視野が新鮮で非常に勉強になりました。ライフスタイルは、忙しさにムラがある小児外科と比べると、予定手術や検査、外来が大半のため生活リズムは比較的一定で、計画的に休暇などがとりやすい印象でした。

自分の経験から、小児外科の修練をしっかりと積み、できれば専門医を取得したのちに泌尿器の修練を行う方が、外科を離れることの不安もなく泌尿器の研修に専念でき、泌尿器の知識も手術手技もよりスムーズに身に着けられると思っています。何を目標とするかにもよりますが、期間も最低2,3年は泌尿器科専属で修練を積んだ方が良いと思います。

小児泌尿器科での研修は、小児外科医が知っておくべき泌尿器科的知識以上の考え方や感性を学ぶことができる貴重な経験でした。現在出産のため一時休養に入りますが、今後小児外科医としてさらに修練を積みつつも、小児泌尿器分野の治療にも少しでも携わり続けることが重要だと考えています。

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