理事長挨拶

理事長挨拶

奥山 宏臣このたび伝統ある日本小児外科学会の第25代理事長を拝命いたしました。本学会が創立以来50年余りに渡って育んできた伝統と革新を礎として、未来を担う若手小児外科医の育成に努め、小児外科学の発展、小児医療に貢献すべく精進していく所存です。

新型コロナウイルスが日本で広まり始めてもう一年余りが立ちますが、感染収束はまだ道半ばです。幸い小児では重症化する例はほとんどありませんが、その一方で、昨年の出生数が八十五万、今年は推定八十万と、想定外のスピードで少子化が進んでいます。こういう状況下では、安心して子どもを産み・育てることができる小児医療体制をしっかりと整備・維持することが、何より本学会に求められています。
中でも、医師の偏在は小児外科においても大きな課題です。前理事長のもとでNational Clinical Databaseを用いて行われた全国の小児外科医数と手術数に関する解析では、都市部に比べ地方での医師不足が明らかになりました。今後はさらに一歩踏み込んで、小児外科医の偏在を解消する具体的な方策について議論を進めたいと思います。

医師の働き方改革も早急に取り組まなければいけない課題です。2024年4月から医師の時間外労働上限規制が適応されますが、これは上記の医師の偏在と密接に関連する問題です。限られた人員で救急医療にも対応してきた小児外科医にとっては、この上限規制をクリアすることは極めて高いハードルとなります。シフト制勤務体制の導入やタスクシフティングによる医師業務の縮小に加えて、地域内で病院の垣根を越えた小児外科ネットワークの構築など、学会独自の新たな取り組みを進めてゆきたいと思います。小児外科における女性医師の割合は約20%と他の外科領域に比べて高いことが特徴で、若い年代ほどその割合は増加しています。そのため、女性が様々なライフイベントに向き合いながらストレスなくキャリア継続できるための環境整備が喫緊の課題です。働き方改革にとともに、女性医師に対する積極的な支援策を、行政に向けて提言したいと思います。

新専門医制度の中で、2018年度に小児外科の基盤領域である外科専門医プログラムが開始されました。サブスペシャルティ領域である小児外科専門医制度については、これまでのカリキュラム制を維持しながら、2022年4月に運用を開始できるよう準備を進めております。また、専門医制度だけに関わらず、関連領域の諸学会との連携をより密にして、小児医療における様々な議論の場や活動にともに参画してゆくと同時に、これまでと同様に母子保健医療や小児がん・難治性疾患に対する厚生行政においてアカデミアとしての役割を果たすために、行政との連携を引き続き図って参ります。

学生、若手医師のリクルートは本学会の最重要ミッションです。我々の未来を担う子ども達の医療に関われることの喜びや誇りをより多くの方々に知っていただき、小児医療に情熱を持った小児外科医の育成に努める所存です。当学会は2019年4月に一般社団法人への法人格変更を行いましたので、コメディカルの皆さんにも準会員として入会していただけることになりました。多職種による安全・安心なチーム医療の提供を目標とし、準会員の方々にとっても魅力的な学会運営を目指したいと思います。

医療を受ける子どもさんのみならず、その提供者である医療従事者にとってもより良い環境を実現できるように、会員の皆様と心を一つにして取り組む所存です。ご支援とご協力を心よりお願い申し上げます。

令和3年6月
日本小児外科学会 理事長
奥山 宏臣

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