小児外科で治療する病気

消化管重複症


 正常な本来の腸以外に異常な腸(重複腸管)が余分に存在する生まれつきの病気です.同じような異常は腸だけでなく口から肛門までのすべての食べ物が通る道 (消化管)にみられ,これらをまとめて消化管重複症といいます.消化管重複症は,食道や肛門など腸以外の場所にみられるものは少なく,腸に最も多くみられ ます.
 どうしてこの病気ができるのかまだ完全にわかっていませんが,お母さんのおなかの中で赤ちゃんの体ができるかなり早い時期に,神経管と呼ばれる後に脊髄 (せきずい)になる管と消化管が分かれる時に障害がおこるためと考えられています.そのため腸管重複症では時にせきつい(背骨)に異常が見られることがあ ります.
 余分な腸(重複腸管)は,正常な本来の腸にくっついてあることが多いのですが,時には全く離れた場所にあることもあります.重複腸管の形は,丸いふくろ状 (球状)のものと長いくだ状(管状)のものがあります.球状のものは,正常な腸と交通がないことが多いのですが,管状のものの多くは正常な腸と一部で交通 をもっています.重複腸管は,余分な腸管であってもその構造は本来の腸と同じようなものですから,その腸の壁には正常の腸と同じように粘膜(ねんまく)が あり,この粘膜には消化液を出す腺(せん)と呼ばれるものがあります.球状の腸管重複症では正常な腸と交通がないため腺から出される消化液がすこしずつ重 複腸管の中にたまってきて重複腸管がふうせんのように大きくなっていきます.その結果,そばにある正常な腸を圧迫して腸の通りが悪くなり,いわゆる腸閉塞 (ちょうへいそく)をおこしてきます.また球状の重複腸管そのものが腸重積症(ちょうじゅうせきしょう)の原因になることもあります.管状の重複症では, 腸閉塞の症状が出てくることは少なく,くだ状になった腸の中で炎症がおこったり潰瘍(かいよう)ができたりするため下血(便に血液がまじったり,肛門から 出血すること)や腹痛の症状がみられます.重複腸管の中には,ふつうの腸の粘膜以外に胃の粘膜がまぎれこんでいることがあり,この場合は重複腸管の中の胃 の粘膜から胃酸が出るため潰瘍ができやすくなります.
 腸閉塞や下血,腹痛などの症状は,他のいろいろな病気でもみられますので,手術前に腸管重複症を確実に診断することは難しいとされ,手術の時に初めて診断されることもまれではありません.しかし最近では,消化管の造影検査,超音波検査,CT・MRI検査などにより手術前に診断されることも多くなってきています.重複腸管の中に胃の粘膜がまぎれこんでいるときは,シンチグラムという検査が有効です.
 治療は原則として手術が必要です.ふつう重複腸管だけを取り除くことは不可能ですから,球状の腸管重複症では,重複腸管がくっついている正常の腸も含めて 切り取り腸をつなぐ手術が行われます.管状の場合は,重複腸管をすべて取り除こうとする正常の腸もかなりたくさん一緒に切り取らなければならなくなります ので,重複腸管の中の粘膜だけを取り除いたり,重複腸管と正常な腸の中が十分につながって交通ができるようにする手術を行います.通常の腸管重複症では手 術が適切に行われれば,後遺症や障害を残すことなく治ることが可能です.

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