小児外科で治療する病気

腸回転異常症

お腹への腸の収まり方(回転と固定)と病気の成り立ち

お腹の中の腸は、赤ちゃんがお母さんのお腹にいる時期(妊娠8〜12週頃)に、複雑な動きをして定位置に収まります。 この過程を「回転」と「固定」と呼びます。

正常な状態: 十二指腸は背中側を右から左へ、大腸はお腹の表面近くを左から右へと大きく回転して収まります。これにより、小腸は左上から右下へと斜めに長く広がり、あたかも「カーテンレール」にしっかり固定されたような安定した形になります(図1)。

腸回転異常症: この回転や固定が途中で止まってしまう病気です。最も多いタイプでは、小腸の根元が「扇の要(かなめ)」のように一か所に集まってしまい、不安定な状態になります(図2)。この不安定な根元を軸にして、腸全体が急激に捻じれてしまうことを「中腸軸捻転(ちゅうちょうじくねんてん)」と言います(図3)。捻じれると腸への血流が途絶え、短時間で腸が壊死(腐ってしまう)する危険があるため、緊急の対応が必要となります。
 

症状

中腸軸捻転が起きたり、腸の回転不足によってできた膜(Ladd靱帯といいます)が十二指腸を圧迫することで症状が出ます。このうち中腸軸捻転による症状は生後1か月以内に出ることが多い(約80%)と言われています.
新生児期・乳児期: 突然ミルクを飲まなくなり、胆汁(たんじゅう)の混じった緑色ないし茶色の嘔吐をするのが特徴です。進行するとお腹が張り、血便が出ることもあります。
幼児期以降: 激しい症状ではなく、繰り返す腹痛や嘔吐、慢性的な便秘・下痢など、さまざまな症状で見つかることがあります。これは捻転が軽度で捻じれたり戻ったりする場合に、強く捻じれたときに比べて症状が軽度あるいは間欠的(起こったり治ったり)にみられるためです。
 

診断

最新のガイドラインでは、体に負担の少ない検査から順に行うことが推奨されています。
腹部超音波(エコー)検査: 放射線の被ばくがないため、最初に行うべき検査とされています。腸の根元の血管が渦を巻いている様子や血流などを確認します。
消化管造影検査: エコーで診断がつかない場合に行います。造影剤を注入して、十二指腸が正しい位置にあるか、小腸が捻じれていないかを確認します。
腹部造影CT検査: 診断が難しい場合や、他の病気との見分けが必要な際に追加で行われることがあります。
 

治療

腸回転異常症は飲み薬では治りません。またたとえ症状がなくても中腸軸捻転症の危険がありますので、診断されれば手術を行うのが一般的です(特定の病気がある場合を除く)。
手術のタイミング:捻転を起こしている場合は、命に関わるため緊急手術が必要です。症状があるが捻転はしていない場合、赤ちゃん(乳児期まで)は速やかに、それ以降の年齢では計画的に手術を行います。
手術の内容(Ladd手術): 捻転を戻し、十二指腸を圧迫する膜(Ladd靱帯)を切り、腸の根元を広げて、捻じれにくい位置(小腸を右側、大腸を左側)に腸を配置し直します。症状のないお子さんや年長のお子さんに対して、傷の小さな腹腔鏡(ふくくうきょう)手術が選ばれることもあります。手術の際、虫垂(ちゅうすい)が通常とは反対の左側に移動するため、将来の虫垂炎の診断を難しくしないよう、あらかじめ虫垂を切除(予防的虫垂切除)することがあります。
 

予後(手術の後)

腸の壊死が起こる前に手術ができれば、その後の成長や発達に大きな影響はありません。ときに捻転が再発する場合があり注意が必要です。また、捻転によって広い範囲の腸を切り取らなければならなかった場合、栄養の吸収が十分にできなくなる「短腸症候群(たんちょうしょうこうぐん)」という状態になり、長期的な点滴管理や特別な栄養療法が必要になることがあります。

図1 正常腸管(小腸はカーテンレイルのような長い範囲に固定されている。)

図2 腸回転異常症(扇の要の様に腸管が収束した場所に固定されている。)

図3 中腸軸捻転

外部リンク

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