概要
胆道閉鎖症は胆汁の通り道である胆管が原因不明に閉塞する病気で、生後数ヶ月以内の乳児に発症する病気です。頻度は、約1万人に1人と稀な病気で、日本では男児に比べて女児に多く発生します。胆汁とは肝臓でつくられる消化酵素であり、正常であれば胆管を通って十二指腸へ流れ込み脂肪の吸収を助けますが、本症では胆道の閉塞により流れなくなった胆汁が肝臓の中に溜まることで肝臓の障害を引き起こします。肝臓の障害が進行すると肝硬変と呼ばれる状態になり、治療が難しくなるので、なるべく早く診断し手術治療をすることが大切です。
症状
胆道閉鎖症では胆汁が腸に流れずに肝臓に溜まることで、様々な症状が現れます。典型的な症状は黄疸、便色異常(薄い黄色からクリーム色の便)、濃黄色尿、肝臓の腫大です。赤ちゃんの黄疸は病気がなくても認められるもの(生理的黄疸)ですが、通常は2週間位で消失します。しかし黄疸が強くなったり、一旦消失したものが再び出現する場合は病的な黄疸を疑います。便色異常は胆道閉鎖症を疑う最も重要な症状です。胆汁中に含まれるビリルビンという色素が腸に流れないため、便の色が薄くなります。生後すぐから便の色が薄いこともあれば、初めは濃い緑や黄色であった便の色が次第に薄くなる場合もあります。本国では母子健康手帳に便カラーカードが添付されており、正常な便の色と見比べることができます(図1)。便の色がおかしければすぐに医療機関を受診する必要があります。
また、稀に胆汁が十二指腸に流れないことによる脂肪の吸収障害により脂溶性ビタミン(ビタミンA、D、E、K)の欠乏症状を認めることがあります。特にビタミンKの欠乏は重篤な出血を来すことがあるため注意が必要です。
図1 便カラーカード(胆道閉鎖症診療ガイドライン日本胆道閉鎖症研究会編より)

診断
診断は血液検査、尿検査の他に、腹部超音波検査、肝胆道シンチグラフィー、十二指腸液検査などを組み合わせて行われます。血液検査では直接ビリルビンという値が上昇することが特徴で、手術後の治療効果の判定にも用いられます。検査の結果、胆道閉鎖症が疑われる場合は手術を行い、術中の胆道造影により病型を含めた確定診断がなされます(図2)。
治療
胆道閉鎖症は時間が経つにつれ肝障害が進行するため、できる限り早く手術を行い胆汁の流れを回復することが自己肝生存率(肝移植をせずに自身の肝臓で生きること)を上げることが知られています。多くを占めるⅢ型に対する手術は胆管の閉塞部を切除し肝臓側の断端を腸管で被うように吻合する肝門部腸吻合術(葛西手術)が行われます(図3)。肝臓からの胆汁の出口が開いている病型(Ⅰ型、Ⅰcyst型、Ⅱ型)では、胆管への腸管吻合が可能なことがあり、Ⅲ型に比べて予後が良いことが知られています。一般的には開腹による手術が行われますが、侵襲の少ない腹腔鏡による手術も行うことができます。ただし、長期的な術後成績に対する優位性は証明されていないので、国内では厳しい条件を満たした限られた施設でのみ行われています。
手術により良好な胆汁排泄が得られ、肝障害の進行が食い止められれば、不自由のない日常生活を過ごすことが期待できます。しかし、手術をしても黄疸が改善しない場合は肝移植が必要になります。また、術後早期の経過が良好であっても、年齢を経てから胆管炎、門脈圧亢進症、肝内結石症、肝肺症候群などの合併症に対する治療が必要になることがあります。従って、手術後も定期的な通院を継続することが重要で、それは成人した後も続きます。2023年に行われた日本胆道閉鎖症研究会による全国調査によると、葛西手術後の5年生存率が90.0%、5年自己肝生存率が56.7%と報告されており、これは欧米のトップレベルの施設の成績と肩を並べるものです。
肝移植は様々な治療を行っても自分の肝臓で生存、あるいは十分な成長・発達が見込めない場合に行われる治療法です。具体的には手術後も黄疸が持続する場合、一旦黄疸がひいても胆管炎などをきっかけに黄疸が再燃する場合、あるいは肝硬変が進行し合併症の治療が困難になった場合に適応となります。前述の全国調査によると、約30%の患者さんが5年以内に肝移植を受けていることになります。肝移植の方法は脳死となった患者様から肝臓をもらう脳死肝移植と、親族より肝臓の一部をもらう生体肝移植があり、胆道閉鎖症に対して国内で行われる肝移植はご両親からの生体肝移植がほとんどです。日本肝移植研究会の報告では、2024年までに胆道閉鎖症に対して行われた脳死肝移植が62例、生体肝移植が2,683例で、5年生存率はそれぞれ88.7%、91.0%と良好な成績です。
図2 胆道閉鎖症の分類(日本胆道閉鎖症研究会ホームページ https://jbas.netより)

図3 葛西手術(日本胆道閉鎖症研究会ホームページ https://jbas.netより)












