小児外科で治療する病気

胎便性腹膜炎

 “腹膜炎”という言葉は盲腸(虫垂炎)がひどくなって腹膜炎を起こしたなどというようなときに耳にすると思います.腹膜(お腹の中で腹壁や腸管などの臓器を全体に覆っている薄い膜)に細菌などが感染し炎症を起こした状態を言い,主に腸管が穿孔(穴があく)して便が腹腔内に漏れたりしたために起こります.しかし,胎便性腹膜炎は,胎児期(生まれる前の時期)に消化管が何らかの原因により穿孔し胎便がお腹の中に漏れて起こる腹膜炎で,細菌は関与せず胎便に含まれる消化液などによる化学的な炎症反応によるものです.消化管穿孔を起こす原因は,消化管閉鎖あるいは狭窄,腸重積,腸捻転などいろいろな病気があります.
 胎便が腹腔内に漏出し炎症を起こすため,腸管同士さらには腸管と腹壁などが強い癒着(お互いにひっつきあうこと)を起こし一塊となったり(線維性癒着型),漏れた胎便や消化液が腸管や他の臓器で袋状に覆われたり(嚢胞型)します.また,腸管の穿孔が出生直前に起こると癒着や袋状に覆われることなく腹水が多く溜まった状態(汎発型)で出生します.
 生まれたときの赤ちゃんは,お腹が張って呼吸が苦しくなる,嘔吐を繰り返す、胎便がなかなかでない等の症状を呈します.最近では,生まれる前に超音波でわかることもあります.お腹のX線写真では,漏れた胎便が化学反応のため石灰化し、骨のような白い塊やすりガラス様の影が見られることがあります(図1).

図1 CT検査で認められた石灰化(矢印)

 治療は手術が原則で,開腹してお腹の中の胎便を洗い出して癒着を剥がし,腸管の穿孔部分を切除してつなぎます.また,穿孔の原因となった病気に応じた操作も加えなければなりません.赤ちゃんの状態があまりよくないときは,腸をつながずに穿孔部付近の腸管をお腹の外に出して一時的に腸ろうとし,全身状態が良くなってから腸管をつなぐ手術を後で行うこともあります.生まれる前に超音波で診断されていても、生まれた時点ですでに穿孔した場所がふさがって手術が必要ない場合もまれにあります.

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