小児外科で治療する病気

膵炎

 膵臓は胃の背中側にある臓器で,消化酵素を分泌する外分泌機能とインスリンやグルカゴンなどのホルモンを分泌する内分泌機能を持っています.膵炎には急性膵炎と慢性膵炎があります.

急性膵炎

 急性膵炎は,膵臓が自ら分泌する強力な消化酵素によって消化されてしまう病気です.膵酵素は蛋白質を分解する強力な力 をもっていますが,膵臓の外に出て初めてその能力が発揮されるようになっています.しかし何らかの理由でこの仕組みが壊れると,膵臓の中で蛋白質が分解さ れることによって膵臓そのものが壊れてしまいます.

 原因は,細菌やウイルスの感染,胆石,アルコール多飲,薬剤,外傷,膵胆管系の先天異常など多くのものがわかっています.しかしいまだに原因が明らかでない家族性膵炎や特発性膵炎などの病気もあります.小児ではそのなかでも外傷と膵胆管系の先天異常が重要です.

 症状は,おなかが痛い,吐き気がしたり吐いたり,おなかが膨れるなどの消化器症状が主ですが,進行すると呼吸や腎臓などの機能が十分働かなくなる多臓器不全をまねき死亡することもあります.

 血液検査では白血球が増加し,アミラーゼやリパーゼなどの膵臓から分泌される酵素が血液中に増加します.画像検査では超音波検査やCT検査が役立ちます.小児では少ない病気なので診断が遅れがちですが,重症になると死亡率が高く,早期診断が重要です.

 治療は,容体が急変する可能性があるので厳重に経過を観察しながら,絶食,安静,点滴からの栄養,胃管による消化管減圧などの内科的治療を始 めます.鎮痛剤,抗菌薬,制酸剤,蛋白分解酵素阻害剤などの薬を使用することもあります.内科的治療で急性症状がよくなっても,その後に膵臓に袋状の仮性 嚢胞ができ,その袋の中に出血や感染を合併することがしばしばみられます.このときは,開腹手術または内視鏡手術によって,嚢胞と胃または小腸をつなぐ手 術が必要となることがあります.非常に少ないですが,膵臓の大部分が壊死してしまう重症型では,腐った部分を切り取る手術を行うことがあります.

 急性期の治療で症状が安定したら,膵炎の原因を明らかにし,その原因に対する適切な治療を行います.膵胆管系の先天異常のなかで最も多いものは先天性胆道拡張症で,これが原因の場合はこの病気に対する根治手術が必要です.

慢性膵炎

 急性膵炎を繰り返して慢性膵炎になることが一般的です.膵臓は炎症の結果硬くなり,膵臓の細胞が減るために外分泌や内分泌の機能が低下します.最初のころの症状は,繰り返す腹痛や食欲低下ですが,病状が進行すると食べ物の消化吸収が悪くなったり糖尿病になります.

 原因の多くはアルコールと胆石で,小児では非常に少ない病気です.しかし,膵癒合不全や輪状膵などの複雑な奇形が原因のものや,家族性膵炎,特発性膵炎 などもあります.小児では膵液が流れにくい状態になっていることが多いため,鎮痛剤や消化酵素薬などの内科的治療には限界があり,膵部分切除術や膵管空腸 側側吻合術などの手術が必要になることもあります.

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