概要
消化管ポリープとは、胃や腸の内側の粘膜にできる、きのこ状に盛り上がった病変のことを指します。茎のあるもの(有茎性)と、茎のないもの(無茎性)があり、大きさや形はさまざまです。
小児にみられる消化管ポリープの多くは良性であり、成人にみられるようながんであることはまれです。しかし、ポリープの数が多い場合(ポリポーシス)や、遺伝的な背景をもつ病気の場合には、将来的ながんのリスクを考慮して慎重な経過観察が必要となります。
小児でみられる消化管ポリープの約90%は若年性ポリープと呼ばれるタイプであり、その他に遺伝性疾患としてPeutz-Jeghers(ポイツ・ジェガース)症候群や家族性大腸ポリポーシス(家族性大腸腺腫症:FAP)などがあります。
症状
消化管ポリープの最も多い症状は血便です。便に血が混じることをきっかけに発見されることが多く、慢性的な出血により貧血がみられる場合もあります。また、腹痛を伴うことや、ポリープが肛門から出てくることで気づかれることもあります。まれにポリープが自然に脱落し、出血とともに排出されることもあります。
若年性ポリープは3〜5歳頃に見つかることが多く、ほとんどの場合は1個のみで、直腸からS状結腸付近に発生しやすいとされています。血便をきっかけに見つかることが多く、肛門に近い場所にある場合には指で触知されることもあります(図1、図2A、B)。
Peutz-Jeghers症候群では、口唇や指先などに黒褐色の色素斑がみられることが特徴で、成長とともに消化管に多発するポリープが出現します(図3A)。ポリープは特に小腸に多く、腹痛、下血、貧血などの原因となります。また、小腸のポリープが先進部となって腸重積を起こし、突然の強い腹痛や嘔吐で発症することもあります(図3B、C)。
家族性大腸ポリポーシスでは、思春期頃から大腸に多数のポリープが出現します。自覚症状がないことも少なくありませんが、放置するとほぼ100%の確率で大腸がんを発症するとされています。そのため早期から計画的な経過観察が重要です。
治療
治療はポリープの種類や数、症状の有無に応じて決定されます。
若年性ポリープは内視鏡による切除(ポリペクトミー)が標準的な治療です。小児では通常、鎮静や麻酔を用いて安全に検査と治療を行います。単発の場合には切除により治癒することが多く、再発はまれです。ただし、ポリープが多数みられる場合には若年性ポリポーシス症候群などの遺伝性疾患の可能性があるため、追加の検査が必要になることがあります。
Peutz-Jeghers症候群では、ポリープによる出血や腸重積を予防するため、定期的に内視鏡検査を行い、大きくなったポリープを切除します。小腸の観察にはバルーン内視鏡やカプセル内視鏡が用いられます。また、この疾患では消化管以外の臓器にも腫瘍が発生する可能性があるため、年齢に応じた全身的なサーベイランスが必要となります。
家族性大腸ポリポーシス(FAP)はAPC遺伝子の異常によって生じる遺伝性疾患であり、思春期頃からポリープが急速に増加します。がんの発生を予防するため、定期的に内視鏡検査を行い、ポリープの状態を評価します。ポリープが多数認められる場合には、将来的な大腸がんを予防する目的で大腸切除術が検討されます。多くの場合、20歳前後までに手術の時期について検討します。また、ご家族にも同じ遺伝子変化がみられる可能性があるため、遺伝カウンセリングや遺伝学的検査が重要となります。
まとめ
小児の消化管ポリープの多くは良性であり、適切な診断と治療により良好な経過が期待できます。一方で、ポリープが多数みられる場合や遺伝性疾患が疑われる場合には、長期的な経過観察が重要となります。現在では内視鏡技術や遺伝子診断の進歩により、より適切なタイミングで治療やフォローアップを行うことが可能となっています。専門の知識をもつ医師と相談しながら、患者さんそれぞれに適した診療方針を決定していくことが大切です。
① 若年性ポリープ (図1、2)
直径1cm程度の表面が平らな球形のポリープで茎をもち、1個のみであることが多く悪性化はしません。好発年齢は3〜5歳で10歳までに見つかることが多いです。場所はS状結腸〜直腸に多いですが、他の結腸にできることもあります。多くは血便を契機に発見されますが、肛門からポリープが露出することや、出血とともにポリープが自然脱落することもあります。肛門に近いものでは、お尻から指を入れて触る(直腸指針)ことができますが、通常は注腸造影検査、内視鏡検査で診断します。内視鏡検査は小児では麻酔が必要ですが、診断と同時にポリープを切除する治療が可能です。切除後に再発することはほとんどありません。全消化管に同じようなポリープが多発するものは、若年性ポリポーシス症候群という別の病気で、これは遺伝性のある極めて稀な病気ですが、悪性化する可能性があります。
図1.若年性ポリープ(1歳男児)
肛門を広げ直腸後壁から出たポリープを引き出す

図2(A、B).若年性ポリープ(4歳女児)
A) 下行結腸のポリープ

B) 内視鏡下に切除

②Peutz-Jeghers(ポイツ・ジェガース)症候群(図3)
消化管に多発するポリープに口唇や指先の黒褐色の色素斑を伴う病気で、多くは遺伝性があり、頻度は5万人に1人と稀な病気です。色素斑は4、5歳頃から出現し、ポリープは10歳までに患者の30%、20歳までに50%程度に見つかります。ポリープができる場所は小腸が最も多く、胃、大腸にもできます。代表的な症状は、腹痛や下血、貧血で、小腸のポリープによる腸重積(腹痛、嘔吐)で見つかることもあります。消化管造影検査、内視鏡検査で診断しますが、近年はバルーン内視鏡(内視鏡についた2つのバルーンで小腸をたぐり寄せながら遠くの小腸まで観察する方法)やカプセル内視鏡(カプセル型の内視鏡を飲み込んで検査を行う方法)も行われます。成人では悪性腫瘍の合併があるため、消化管以外の検査も行います。腸重積や出血を予防するため大きなポリープは内視鏡や手術で切除しますが、検査や治療のタイミングの決定には専門家による判断が必要です。定期的な内視鏡でのフォローアップ、ポリープ切除が必要です。
図3 (A、B、C) ポイツ・ジェガース症候群(13歳女児)
A)口唇の色素斑

B)腸重積により腸閉塞を発症

C)重積した腸管とともに切除されたポリープ(分葉状)

③家族性大腸ポリポーシス(家族性大腸腺腫症)
大腸に多数のポリープができ、40歳をこえると約半数に大腸癌が発生する遺伝性(APC遺伝子変異)の病気で、頻度は1.7万人に1人の稀な病気です。10歳前後から大腸全域にポリープが発生し、下痢、腹痛、下血などの症状がでますが、実際には無症状のうちに検査で発見されることも多いです。60歳ごろまでにはほぼ100%大腸癌を発症します。大腸癌予防のため、20代前半までに大腸を切除することがすすめられています。











