小児外科で治療する病気

心室中隔欠損症

はじめに
 心室中隔欠損症は代表的な先天性心疾患の一つで1000人に3人の割合で出生し,うち約半数は生後1年以内に自然閉鎖することが知られています.本疾患は治療を必要とする先天性心疾患の約20%とされていますが,胸部外科学会による過去4年間の先天性心疾患手術件数の全国調査でも本疾患は平均19.3%と,もっとも多い割合を占めています.

症状
 症状は軽い場合から心不全を伴う重い場合まであり一様ではありません.呼吸が荒く回数が多い,ミルクや食事をとる量が減り体重が増えない,元気がない,汗をかきやすい等の症状がある場合は病状が進行している可能性が高いので早めに専門の医師の診察を受ける必要があります.

診断と治療
 心雑音が特徴的所見で新生児検診や乳児検診で発見される場合も少なくありません.診断は聴診,胸部レントゲン,心電図等の所見を参考にしますが,最近は心エコー検査が有力な診断方法になりつつあります.診断後は強心剤と利尿剤を使用して心機能の改善を図ります.通常は心臓カテーテル検査を行なってから根治手術を行ないますが,肺高血圧を合併する場合は早期手術が必要です.ただし全身状態が悪い場合や肺炎などの感染症を繰り返すお子様に対しては,あらかじめ肺動脈を狭くする姑息手術を行なって心肺機能と全身状態を改善させてから二期的に根治手術を行なう場合があります.

手術
 病悩期間を短くすることの重要性から手術時期が低年齢化する傾向にあり,心不全症状の重いお子様では1歳未満,比較的軽いお子様では無輸血手術も可能な2-4歳とする施設が多いようです.欠損孔の位置には大きく分けて4つの形があります.我が国では房室弁の近くと肺動脈弁の近くにある形が多く,欠損孔が大きい場合には人工布を使って閉鎖します.手術は人工心肺を使用して体外循環を確立し,心拍動を停止させ心臓の一部を切開して人工布を欠損孔に縫着します.人工布は時間の経過とともに心臓構造の一部に組み込まれるため成長後も取り替える必要はありません.

結果
 手術成績は年々改善し最近の成功率は95%以上ですが,欠損孔が多数ある場合は率がやや低下します.重大な術後合併症の一つは徐脈を起こす完全房室ブロックですが,最近は発生率が2-3%以下に減少しました.

術後経過と課題
 退院後しばらくは強心剤や利尿剤の内服を継続する必要がありますが,心肺機能の改善が検査で確認されれば投薬を中止していきます.手術後の運動許容範囲をどのように設定するかは,お子様はもとよりご家族やお子様を預かる施設にとって重要な問題です.かかりつけの医師とよく相談をしながら慎重に判断していくことが大切です.

外部リンク

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