小児外科で治療する病気

臍帯ヘルニア

胎児のおなかの壁は,お母さんの子宮の中で胎生早期(3~4週)に作られますが,それが正しく作られないとおなかの壁に穴ができてしまい,赤ちゃんはへその緒(臍帯)の中に胃や腸,肝臓などが出たままの状態で生まれてきます.これを臍帯ヘルニアといいます.
 臍帯ヘルニアは,おなかの壁にできた穴の場所により,(1)臍上部型,(2)臍部型,(3)臍下部型の3つに分けられます.最も多いのは臍部型です.穴が大きい場合は腸だけでなく肝臓も出ていることがあります(図1).穴が小さく小腸の一部だけがわずかに出ているものは臍帯内ヘルニア(図2)と呼びます. 染色体異常が多く, 臍腸瘻(図3)など腸の奇形を伴うことが多いです.
 臍帯ヘルニアの治療は,おなかの外に出ているヘルニア嚢(臓器を包んでいる膜)に包まれた臓器をおなかの中に戻し,おなかの壁を閉めることです.臍帯内ヘルニアの場合は、臍腸瘻などの奇形がなければ臓器をおなかの中に戻すのみでおなかの穴は自然に閉鎖するのを待つ場合もあります. 手術をする時期ですが,ヘルニア嚢が破れていないかぎり,嚢を清潔にし, 体温低下と脱水に注意すれば生後24時間くらいは手術を待つことができます.おなかの外に出ている臓器が少なければ,1回の手術でおなかの壁を閉めることができます(一期的修復術).しかし出ている臓器が多い場合や肝臓も出ている場合は,1回の手術ではおなかの壁を閉めることができないので,何回かに分けて少しずつ臓器をおなかの中に入れ込みます(多期的修復術,図 1).通常は1~2週間でおなかの中に収めることが可能ですが, 無理に入れ込むと小さなおなかの中で臓器が圧迫され, 臓器の血の巡りが悪くなることがあるので加減が必要です. また,生まれつき心臓の病気などの重い合併奇形があり,全身状態が悪い場合は,生まれてすぐに手術をすることが危険なので,臍帯の膜を特殊な液で消毒しながら皮膚のように硬く強くなるのと,1歳を過ぎて体が大きくなるのを待って,おなかを閉める方法もあります(保存的療法)が, 近年保存的療法の対象となるお子さんは減少傾向にあると思います.
 現在,臍帯ヘルニアのほとんどは,胎児超音波検査によって生まれる前に診断されますので,生まれる前にお母さんが新生児科と小児外科の専門医がそろった病院に入院されるのが理想的です.これを母体搬送といいます.臍帯ヘルニアはその病気の種類や合併奇形のあるなしによって,病気の重さと治療のあとの結果が大きく違う病気です.お子さんがもしこの病気であると診断されましたら,お父さん,お母さんには,お子さんがお生まれになる前に,新生児科医や小児外科医から,この病気と治療計画について充分な説明を受けられることをお勧めします.

図1
肝臓と胃,腸が脱出した臍部型の巨大な臍帯ヘルニアです.このようなときは1回の手術で脱出した臓器をお腹の中に入れることは不可能で, 多期的手術を行います.人工被膜でヘルニア嚢を覆い, 重力と被膜の絞り込みで加圧することでおなかの壁を伸ばし, おなかの中のスペースを広げます.臓器がほぼおさまると人工被膜を取り除いておなかの壁を閉じます.

図2
超低出生体重児(1000g未満)の臍帯内ヘルニアです.おへその穴は小さく小腸だけが脱出しています.

図3
臍腸瘻を併発した臍帯内ヘルニアです.瘻孔から便が漏れるのでヘルニア嚢の汚染があります.手術で腸の穴をふさぎます.

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