小児外科で治療する病気

漏斗胸

概要

漏斗胸(ろうときょう)は、前胸部の骨である胸骨が内側に陥凹することで胸の形がくぼんで見える病気です。肋骨と胸骨をつなぐ肋軟骨の発育のバランスが崩れることで胸骨が内側に引き込まれることが原因と考えられています。
多くの場合は命に関わる病気ではありませんが、陥凹が強い場合には心臓や肺が圧迫され、運動時の息切れや胸痛、心電図異常などがみられることがあります。また症状が軽い場合でも、胸の外見が気になることがきっかけで受診されることが多く、整容面や心理的な影響も重要な治療適応となります。
 

症状

漏斗胸では、胸の中央がへこんで見える外見上の変化が最も特徴的です。軽症の場合は症状がほとんどないことも多いですが、陥凹が強い場合には運動時の息切れや疲れやすさ、胸痛、動悸などがみられることがあります。
また思春期になると外見を気にする気持ちが強くなり、心理的な負担を感じることもあります。学校生活や水泳などで胸を見られることを気にして受診される患者さんも少なくありません。
 

診断

診断は主に外見から行われますが、陥凹の程度を客観的に評価するために画像検査を行うことがあります。胸部CT検査では、胸のへこみの程度を示す指標(Haller indexなど)を計測し、重症度の評価に役立てます。また胸部レントゲン検査や心電図、心エコー検査などを行い、心臓や肺への影響を確認することもあります。
 

治療

治療方法は陥凹の程度や症状、年齢、本人の希望などを総合的に考慮して選択されます。
軽症の場合には経過観察が可能であり、姿勢の改善や運動により胸郭周囲の筋肉を鍛えることで外見の改善が期待できる場合があります。水泳や体幹トレーニングなどが推奨されることがあります。
近年では陰圧吸引療法(バキュームベル療法)も行われています。専用の装具を胸に装着して陰圧をかけることで胸骨を徐々に持ち上げる治療法で、自宅で継続して行うことが可能です。通常は1回30〜60分程度、1日1〜2回、数年にわたって継続します。比較的軽症から中等症の患者さんで効果が期待されます。
陥凹が強い場合や症状がある場合、また整容面や心理的負担が大きい場合には手術治療が検討されます。現在最も一般的に行われている手術方法はNuss法と呼ばれる方法で、胸の側方から金属製のバーを挿入し、胸骨の裏側から前方へ持ち上げて形を矯正します。通常は2〜3年間バーを体内に留置し、その後抜去します。
そのほかの手術方法として、胸骨翻転術や胸骨挙上術などが行われることもありますが、現在は低侵襲であるNuss法が広く普及しています。
 

手術時期について

手術時期については以前、3〜15歳頃と幅広く考えられていましたが、現在は胸郭の柔軟性と再発リスクのバランスを考慮し、学童期後半から思春期前(おおよそ10〜15歳前後)に行うことが多くなっています。この時期は胸郭がまだ柔らかく矯正しやすい一方で、成長に伴う再陥凹のリスクが比較的低いと考えられています。
一方で、症状が強い場合や心理的負担が大きい場合には、より早い時期に手術が検討されることもあります。また近年では成人に対してもNuss法が安全に行われるようになっており、年齢のみで手術適応が制限されることは少なくなっています。
手術時期の決定にあたっては、胸の変形の程度、心肺への影響、日常生活への支障、心理面への影響などを総合的に考慮することが重要です。
 

まとめ

漏斗胸は胸の形の変化を特徴とする疾患であり、多くの場合は生命に関わることはありませんが、外見や症状によっては治療が検討されます。現在は陰圧吸引療法や低侵襲手術であるNuss法など治療の選択肢が広がっており、それぞれの患者さんの状態に応じた治療が可能となっています。専門医と相談しながら適切な治療方針を決定することが重要です。

外部リンク

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