小児外科で治療する病気

血管腫、血管奇形・リンパ管奇形(リンパ管腫)

脈管(血管やリンパ管)を原因とする腫瘤(かたまり)は「脈管性腫瘍」と「脈管奇形」に分けられます。脈管性腫瘍と脈管奇形は似て非なるものであり、脈管性腫瘍は脈管が増殖した腫瘍で血管腫が代表的です。一方、脈管奇形はあくまで構造上の異常あり、リンパ管奇形(リンパ管腫)や静脈奇形などが含まれます。ここでは小児でよくみられる血管腫とリンパ管奇形について述べることといたします。
血管腫
脈管腫瘍は血管がかたまりのできものとなったもので、代表的なものには「乳児血管腫」があります。以前は「いちご状血管腫」とも呼ばれていたものです(図1)。
乳児血管腫は生まれて数週でできます。場所は頭から体のどこにでもできますが、首から上が多いとされています。一般的に2歳頃まで大きくなりますが、5歳過ぎには自然に消失します。
良性の腫瘍ですが、大きくなって体の機能を悪くしたり、出血や潰瘍、感染などの危険があったり、美容面で問題となりそうな場合には治療を行う必要があります。
治療は点滴、内服のお薬、手術、ステロイド、レーザー治療、硬化療法、冷凍凝固療法、放射線治療、持続圧迫療法など色々な治療方法が報告されています。それぞれの腫瘍の状態に応じた治療法を選択いたします。皮膚科や形成外科でも治療を行います。
その他、脈管性腫瘍には腫瘍で血液中の血小板が消費され、血が止まりにくくなるカサバッハ・メリット症候群を起こすものや、悪性度の高いものがあります(図2)。専門の知識を持った小児外科医や小児科医にご相談されることをお勧めします。

図1 乳児血管腫(いちご状血管腫)

図2 肝血管内皮腫のCT画像(肝臓にできた脈管性腫瘍の一つでカサバッハ・メリット症候群や心不全をおこすことがあります。)

リンパ管奇形

脈管奇形は生まれつき脈管が異常な構造を持つもので、代表的なものにリンパ管奇形があります。リンパ管奇形は首や脇の下、お腹の中などにリンパ液が溜まる袋を形成する病気です。以前は「リンパ管腫」とも呼ばれていましたが、腫瘍ではないため最近では「リンパ管奇形」と呼ばれるようになってきています(図3)。良性の疾患ですが、出血や感染を起こして痛みや発熱を伴うことがあります。また大きくなると発生する場所によっては、他の臓器を押さえつけて症状が出現することがあります。例えば首であれば気道(空気の通り道)を押さえて呼吸への影響が出ます。またお腹の中であれば内臓への影響が出たりすることがあります。
治療は①外科的治療、②硬化療法、③内科的治療があります。
①外科的治療:
リンパ管奇形は手術で完全に摘出することができれば、完治します。しかし、筋肉や重要な血管、神経の隙間に入り込んでいる場合には全て切除する事は難しく、部分的な切除となる場合があります。
②硬化療法:
現在、最も一般的な治療方法です。特殊な薬剤を袋の中に注入するとその反応で袋が小さくなります。繰り返し行うことができ、傷も残らない良い方法ですが、お薬の反応で一時的に高熱が出たり、腫れがひどくなることがあります。また、この治療では効果の得られにくいリンパ管奇形のタイプがあり、その場合は他の治療法が必要になります。
③内科的治療
リンパ管奇形に対して有効なお薬の報告がいくつかありますが、まだ一般的ではありません。しかし小児外科領域では近年、漢方薬のリンパ管奇形に対する有効性が注目されています。
なお、出生前にお母さんのお腹の中で発見されることもあり、場所や大きさによっては小児外科医の立会いのもとに出産となることもあります。
その他の脈管奇形には毛細血管、静脈、動脈の異常によってできる血管奇形があります。それぞれの病状に応じた治療が必要となるため、専門の知識を持った小児外科医や小児科医にご相談されることをお勧めします。

図3 リンパ管奇形(リンパ管腫)

外部リンク

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