概要
横紋筋肉腫は軟部組織という筋肉やその周りのやわらかい組織にできる悪性腫瘍の中で最も多い小児がんです。病名に「横紋筋」とありますが、手足や体幹の筋肉だけでなく、頭や顔の表面、目や鼻の奥、喉の周囲などの頭頸部、膀胱や前立腺、精巣、子宮や腟、外陰部、肛門周囲など、体のさまざまな場所に発生します。また、肝臓や胆道、後腹膜などにできることもあります。
10歳未満で見つかることが多く全体の約3~4割を占めますが、思春期以降から成人まで、幅広い年齢で発症します。
症状
横紋筋肉腫は発生部位によって症状が異なります。腫瘍ができた部位の腫れや痛みのほか、周囲の臓器を圧迫したり、通り道をふさいだりすることで症状が現れます。眼窩や頭頸部、体幹、会陰部、四肢、精巣周囲では、腫れや痛みがみられます。眼窩では眼の動きが悪くなることがあり、鼻や目の奥(傍髄膜)では鼻づまりや鼻汁が出ることがあります。膀胱や前立腺、腹部臓器にできた場合には、腹部膨満、便秘、排尿困難などが起こり、膀胱では血尿、腟や子宮では出血や血の混じったおりものがみられることがあります。肝臓や胆道にできた場合には、皮膚や白目が黄色くなる黄疸が現れることがあります。
診断
横紋筋肉腫が疑われた場合には、CTやMRI、PET検査、骨の検査などを行い、腫瘍の大きさや、リンパ節転移や遠隔転移がないかを詳しく調べます。病変の部位によっては背中から少量の液体(髄液)を調べる髄液検査を行うことがあります。すでに手術で腫瘍を切除しその後に横紋筋肉腫と診断された場合でも、治療を始める前には同様の検査を行い、病気の広がりを正確に評価します。
最終的な診断は、手術や生検で取り出した腫瘍を顕微鏡で詳しく調べる病理検査によって行われます。横紋筋肉腫と診断された場合には、胎児型か胞巣型といった組織型の判定や、胞巣型に特徴的なPAX3-FOXO1、PAX7-FOXO1などの融合遺伝子の有無は、治療方針を決めるうえで重要です。
治療
横紋筋肉腫の治療は、抗がん剤治療、放射線治療、手術を組み合わせて行います。抗がん剤治療は、すべての患者さんに行われ、長年にわたりビンクリスチン、アクチノマイシンD、シクロホスファミドを組み合わせた治療が基本となっています。治療中には、脱毛や吐き気、下痢、感染症にかかりやすくなるなどの一般的な副作用のほか、薬の種類によって、手足のしびれ、便秘、肝臓や膀胱の障害、将来の成長や妊娠に影響する可能性がみられることがあります。そのため、病気の状態に応じて薬の量を調整し、副作用をできるだけ抑える工夫が行われています。
放射線治療も多くの患者さんで行われ、横紋筋肉腫に対して高い効果があります。一方で、成長への影響や皮ふ・筋肉の障害など、治療後にあらわれる影響にも注意が必要です。そのため、治療の効果と体への負担を考えながら放射線量を調整し、治療後も長期的な経過観察を行います。
手術は、腫瘍を安全に取り切れる場合には有効ですが、腫瘍が重要な臓器の近くにできることが多いため、診断時にすぐ行われることは多くありません。多くの場合、抗がん剤や放射線治療で腫瘍を小さくしてから、必要に応じて手術を行います。手術の時期や方法は、複数の診療科が相談して慎重に決定されます。
治療後は、病気の再発がないか、また治療による長期的な影響が出ていないかを確認するため、定期的に画像検査や血液検査を行いながら経過をみていきます。横紋筋肉腫の治療成績は全体として改善してきており、約70%の患者さんが長期にわたり生存しています。ただし、病気の状態によって差があり、比較的軽い状態の患者さんでは高い治癒が期待できる一方で、病気が進んだ状態では、半数以上の患者さんが長期生存に至っていないのが現状で、さらなる治療の工夫が求められています。
本邦では、2004年に横紋筋肉腫研究グループ(JRSG)が結成され、全国的な研究が進められてきました。2015年に日本小児がん研究グループ(JCCG)が設立されて以降は、その役割をJCCG横紋筋肉腫委員会が引き継ぎ、日本で行われている臨床試験を通じて、海外の研究グループと協力しながら治療の改善が進められています。











