小児外科で治療する病気

気管・気管支軟化症

概要

気管・気管支軟化症は,気管や気管支の壁を構成する軟骨が脆弱であったり,発育が不十分であるために,呼気時に気管・気管支の内腔が保てず扁平化し,気道閉塞症状をきたす病態です.
原因としては,気管軟骨そのものの脆弱性や膜様部が幅広いこと(内因性),大動脈など隣接する大血管や腫瘍による外部からの圧迫(外因性),長期の気管内挿管や感染による後天的な軟骨の脆弱化などがあります.先天性食道閉鎖症の約10%に治療を必要とする気管軟化症が合併することが知られています.
 

症状

主な症状として,犬が吠えるような咳(犬吠様咳嗽),呼気時の喘鳴(ゼーゼー・ゴロゴロという音),泣いたときやミルクを飲むときの呼吸音の異常がみられます.また,気道感染を繰り返す(反復性気道感染)こともあります.
重症例では,dying spellとよばれる急性の窒息発作を起こすことがあり,突然のチアノーゼ(皮膚が青紫色になる),呼吸困難,呼吸停止をきたし,生命に危険が及ぶ場合があります.
 

診断

胸部X線の側面像で気管が扁平にみえることがありますが,気管軟化症は機能的な病変(呼吸に伴って変化する)であるため,通常のX線検査やCT検査だけでは診断が難しい場合があります.
確定診断には,気管支鏡検査(気管支ファイバースコピー)による自発呼吸下での観察が最も確実で,呼気時に気管内腔が虚脱する所見を直接確認します.シネトラキオグラフィー(透視下で呼吸時の気管内径の変化を観察する方法)も有用です.
気管の外からの圧迫(血管輪など)が疑われる場合は,造影CT検査やMR血管造影(MRA)で大血管と気管の位置関係を評価します.
 

治療

(1)経過観察(自然軽快が期待できる場合)
気管軟化症そのものに対する根本的な内科的治療法は現時点ではありません.しかし,成長に伴い気管壁の支持力が強くなるため,多くの場合は2歳頃までに症状が徐々に軽快します.軽症例では,自然軽快を待ちながら経過観察を行います.その間,気道感染は症状を急激に増悪させる要因となるため,感染の予防と早期治療が重要です.
(2)姑息的治療
経過観察のみでは症状のコントロールが困難な場合や,自然軽快を待つ間の呼吸管理として,以下の方法が用いられます.
NPPV(非侵襲的陽圧換気)は,マスクを介して気道に陽圧をかけることで,気管の虚脱を防ぎ気道の開存性を保つ方法です.人工呼吸管理下では終末呼気陽圧(PEEP)を高めに設定することが推奨されます.
気管切開は,重症の気管軟化症に対しては有効でかつ救命のために必要な処置となることがあります.気管カニューレの選択には慎重を要し,調節型気管カニューレを用いることで,カニューレ先端を狭窄部を越えて留置し,気道の開存性を確保できる場合があります.
(3)外科的治療
dying spellを繰り返す場合や,人工呼吸器からの離脱が困難な重症例では,外科的治療が考慮されます.
大動脈胸骨固定術(aortopexy)は,気管軟化症に対する代表的な手術です.大動脈を前方の胸骨に固定することにより,大動脈後壁と線維性に結合している気管前壁を前方に引き上げて,気管内腔を広げます.主に気管中部から下部にかけての軟化症に効果が高く,体の成長に伴い気管壁の支持力がつくまでの間,症状を改善させることを目的としています.
その他の手術として,気管支軟化症に対しては,狭くなった気管支の一部を切除して再建する方法,気管支の外側をステント(支持材)で支える外ステント術,内視鏡を用いて気管内にステントを留置する方法があります.肺動脈スリングなど血管による圧迫が原因の場合は,圧迫血管の位置を修正する手術(肺動脈吊り上げ術など)が行われます.

外部リンク

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