小児外科で治療する病気

小児肝腫瘍(主に肝芽腫)

概要

子どもの肝臓にできる悪性腫瘍の中で最も多いものが、肝芽腫(hepatoblastoma)です。主に乳幼児に発症し、小児の肝腫瘍の多くを占めています。以前は手術のみが治療の中心と考えられていましたが、現在では化学療法(抗がん剤治療)と手術を組み合わせた集学的治療が標準となり、治療成績は大きく改善しています。
肝芽腫では、腫瘍の広がりや性質を詳しく評価し、それぞれの患者さんに適した治療方法を選択することが重要です。近年では国際的な治療研究の成果により、手術の安全性を高めながら治癒率の向上が図られています。
 

発生頻度

肝芽腫は比較的まれな病気で、日本では年間およそ70例前後が発症するとされています。出生数数万人に1人程度の頻度でみられ、多くは3歳以下の乳幼児に発症します。
 

症状

最も多い症状は、お腹のしこりや腹部のふくらみです(図1)。痛みを伴わないことも多く、保護者の方が気付いて受診される場合があります。そのほか、食欲低下や体重増加不良、腹痛、発熱などの症状がみられることもあります。乳幼児健診や他の目的の検査で偶然発見されることもあります。
 

診断

診断には血液検査と画像検査を組み合わせて行います。血液検査では、AFP(αフェトプロテイン)という腫瘍マーカーが多くの肝芽腫で高値を示します。AFPは診断だけでなく、治療効果の判定や再発の早期発見にも重要な指標となります。
画像検査としては超音波検査、CT検査、MRI検査などを行い、腫瘍の大きさや肝臓内での広がり、血管への影響、肺転移の有無などを詳しく評価します。肝芽腫ではPRETEXT分類と呼ばれる評価方法を用いて、肝臓内のどの範囲に腫瘍が存在するかを判定し、治療方針の決定に役立てます。
 

治療

現在の標準治療は、化学療法と手術を中心とした集学的治療です。多くの場合、まず術前化学療法を行い、腫瘍を小さくすることで安全に手術が行える状態にします。また、目に見えない小さな転移に対しても効果が期待されます。主にシスプラチンを中心とした抗がん剤が使用され、症例によってドキソルビシンなどを組み合わせることがあります。
腫瘍が十分に縮小した段階で手術を行い、肝臓の一部を切除します。小児の肝臓は再生能力が高く、一定範囲を切除しても機能が保たれることが多いとされています。手術後には再発を防ぐ目的で追加の化学療法を行うことがあります。
腫瘍が広い範囲に及び、通常の肝切除では完全に取りきることが難しい場合には、肝移植が治療選択肢となります。近年は肝移植の成績も向上しており、適切なタイミングで移植を行うことで治癒が期待できる場合があります。
また、肺に転移がある場合でも、化学療法によって縮小した後に肺の病変を切除することで、治癒を目指すことが可能です。
 

治療成績

現在では、腫瘍が肝臓内に限局している場合、5年生存率は80〜90%以上と報告されており、治療成績は大きく改善しています。一方で、転移を伴う場合や化学療法に対する反応が十分でない場合には、より専門的な治療が必要となります。
近年は、PRETEXT分類に基づいたリスク層別化治療や肝移植を含めた治療戦略の確立により、さらなる治療成績の向上が期待されています。

図1 肝芽腫症例の腹部とCT所見

外部リンク

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