小児外科で治療する病気

耳前瘻孔


 耳の前に生まれつき出来る病気のひとつです.多くは耳の孔の前の小さなくぼみや穴(瘻孔)としてみられ,左右ともにみられることが多いものです.穴がある だけで症状のないときは治療をする必要はありません.しかし穴の周りが赤く腫れたり,穴から膿が出たりするような炎症を繰り返すときは治療が必要です (図).このような炎症は乳幼児から成人まですべての年齢層でみられます.このようなときは,まず出来るだけそれらの症状を落ちつかせるような外科的また は内科的な治療をして,炎症がおさまってから根本的な治療,すなわち瘻孔をすべてとる手術を行います.
 手術は全身麻酔で行います.瘻孔は奥が深 いことや広がっていることがあります.また,アリの巣状に方々に枝分かれしていることもありますので,手術を始める前に色素を瘻孔の中に適量入れて,瘻孔 がよく確認できるようにします.瘻孔の周囲に皮膚切開を入れて,瘻孔の壁を丁寧にはがし,瘻孔全体を一塊として摘出します(瘻孔摘出術).しかし瘻孔の壁 を取り残すと感染や炎症などをおこして再発することがあります.
 耳介の前方や耳輪に瘻孔があるときは,多くは皮膚,皮下組織の中に瘻孔から盲端 までがあります.一方,耳輪の内側で外耳道に近いところにある対耳輪に瘻孔があるときは,瘻孔の壁は軟骨を貫いているため,瘻孔の壁を取るのが難しいこと があります.また取ったあとの軟骨にできた穴を閉じることも難しいので,ときに手術後に創が開いたり,感染をおこすことがあります.まれですが耳介の裏側 に穴がある耳後瘻孔もあります.

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