小児外科で治療する病気

胃・十二指腸潰瘍

潰瘍とは、消化管壁の一部が粘膜筋板よりも深くまで欠損した状態をさし、胃または十二指腸に発生するものを総称して、胃・十二指腸潰瘍(消化性潰瘍)といいます(図1).小児の消化性潰瘍は、成人に比べると比較的まれな疾患ですが、新生児期から学童期に至るまで、どの年齢においても発症します.


図1 潰瘍のシェーマ

小児における消化性潰瘍の原因はさまざまです.主な原因としては、ヘリコバクター・ピロリ菌(以下ピロリ菌)の感染、心因性のストレス・出生時や外傷などの肉体的ストレス、さらに非ステロイド系抗炎症(NSAIDs)やステロイドなどの薬剤があげられます.またアレルギーが関与する好酸球性胃腸炎、自己免疫疾患である炎症性腸疾患、全身性疾患である慢性肉芽腫症、IgA腎症などに合併する場合もあります.
 消化性潰瘍の症状としては、空腹時や食後の上腹部に限局した痛みがよく知られています.小児において、このような典型的な症状をみるのは、学童期に多く、新生児・乳児期においては、吐血や下血などの消化管出血や繰り返す嘔吐などが主症状であったり、幼児期以降の症例では臍周囲の腹痛、繰り返す嘔吐、体重減少や鉄欠乏性貧血などが主症状であったりします.
診断は、まず症状から消化性潰瘍を疑い、便潜血反応検査、血液検査で消化管出血や貧血の有無を確認します.確定診断には上部消化管内視鏡検査(EGD)が必要で(図2,3)、潰瘍の病期診断や合併症(出血や狭窄など)の確認と処置が可能です。


図2 上部消化管内視鏡検査 胃の中に大きな円形の活動期の深掘れ潰瘍を認める


図3 上部消化管内視鏡検査 NSAIDs起因性多発胃潰瘍

ピロリ菌の感染や好酸球性胃腸炎などの検索のため、禁忌事項がなければ一部組織を採取し病理診断も行います。ただし、小児のEGDの実施には全身麻酔や静脈麻酔を用いた鎮静が必要であり、手術に準じた検査法となります。また、ピロリ菌感染の有無は、侵襲の少ない検査方法(尿素呼気試験や便中ヘリコバクター・ピロリ抗原検査など)でも確認可能です.
治療はH2 ブロッカーやプロトンポンプ阻害剤(PPI)といった潰瘍治療剤を投与します. もちろん可能であれば、原因と考えられる薬剤は中止します.ピロリ菌の感染が証明されれば、抗生剤とPPI内服による除菌療法が必要となります.重症例では潰瘍部位からの大量出血や胃・十二指腸穿孔(穴があくこと)をきたしている場合もあり、EGDでの止血術や緊急開腹手術が必要になることもあります.

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