小児外科で治療する病気

ヒルシュスプルング病

ヒルシュスプルング病は、腸の動きを制御する神経節細胞が生まれつき無いために腸の動きが悪く腸閉塞や重い便秘症をおこす病気です.消化管の神経節細胞は胎齢5週から12 週頃にかけて,食道の口側の端に発生し肛門に向かって順々に分布していきますが,この過程に何らかの異常がおこり途中で分布が止まってしまうことがこの病気の原因とされています.そのため、腸の神経節細胞が肛門から口側に向かって連続して欠如していることが特徴です.この病気の約80%は神経節細胞のない腸(無神経節腸管)の範囲が肛門からS状結腸くらいまでですが、なかには大腸の全部、あるいは大腸だけでなく小腸までおよぶこともあります.病気の範囲は生まれつき決まっているため、生後に範囲が変化することはありません.
 おなかの張りが非常に強く嘔吐を伴うことや生まれつき便が出にくいことがきっかけで新生児や乳児の時期に診断されることが多く、重い腸炎や穿孔を合併して危険な状態になることもあります.神経節細胞の無い腸が非常に短い時は、症状が軽いために便秘として治療され、幼児期以降に診断がつくこともあります.
 ヒルシュスプルング病の診断には専門的な検査が必要であり,(1) 無神経節腸管は拡がりが悪く細いため、おしりから造影して腸の太さを調べる注腸造影検査(図1)、(2)おしりの締め具合をはかって、正常であればみられる肛門括約筋の弛緩反射が欠如していることを確認する直腸肛門内圧測定検査、(3)直腸の粘膜を少し切り取って神経の異常を顕微鏡でみる直腸粘膜生検検査、などをおこないます.

図1 注腸造影検査では神経節細胞が無い肛門近くの腸は拡がらず、細く描出される(矢印)

図2 手術で切除した腸管(細い部分が肛門側の神経節細胞の無い腸管)

治療は手術が必要です.神経節細胞の無い腸を切り取り,神経節細胞のある口側の正常の腸を引き降ろして肛門とつなげることが基本です.おなかを開ける手術のほか,最近では傷痕を小さくするために腹腔鏡を使って行う方法や,すべての手術を肛門から行う経肛門手術などがよく行われています.手術により約90%は正常と遜色ない排便機能が期待できますが、手術後に少し便秘や腸炎が残ることもありますので,手術後に排便を行うための訓練をしたり,おしりの機能を調べたりすることもあります.また、お子さんの成長と発育が順調に進むよう長期にわたって外来での経過観察が必要です.

外部リンク