小児外科で治療する病気

胚細胞性腫瘍

概要

胚細胞性腫瘍は、将来卵子や精子になる細胞のもとである原始生殖細胞から発生する腫瘍です。これらの細胞は胎児期に体の中を移動して性腺(卵巣・精巣)に到達しますが、その途中で別の場所にとどまった細胞が腫瘍化することがあります。そのため、胚細胞性腫瘍は卵巣や精巣だけでなく、体のさまざまな部位に発生することが知られています。
発生部位としては、卵巣、精巣のほか、頭蓋内、頚部、縦隔(胸の中央)、後腹膜、仙尾部(尾てい骨の周囲)などが代表的です。特に新生児や乳児では仙尾部に発生することが多く、年長児では卵巣に発生することが多いとされています。
胚細胞は体のあらゆる組織に分化する能力(多分化能)を持つため、胚細胞性腫瘍にはさまざまな組織型が存在します。成熟した組織からなる良性腫瘍である成熟奇形腫から、未分化な細胞からなる悪性胚細胞腫瘍まで幅広い病態が含まれます。また、それらの成分が混在する場合もあります。
 

分類

胚細胞性腫瘍は大きく以下の3つに分類されます。
成熟奇形腫は、皮膚や脂肪、骨、神経などの成熟した組織から構成される良性腫瘍であり、小児の胚細胞性腫瘍の中で最も多くみられます。手術により完全に切除できれば治癒が期待できます。
未熟奇形腫は、成熟しきっていない組織成分を含む腫瘍であり、多くは手術により治癒しますが、組織の未熟性の程度によっては慎重な経過観察が必要となります。
悪性胚細胞腫瘍には、卵黄嚢腫瘍(yolk sac tumor)、胚細胞腫(germinoma)、絨毛がん(choriocarcinoma)などが含まれ、腫瘍の進行度に応じて手術に加えて化学療法を行います。これらの腫瘍では複数の組織型が混在することもあります。
 

発生頻度

日本小児外科学会の集計では、胚細胞性腫瘍のうち半数以上が成熟奇形腫などの良性腫瘍です。新生児では仙尾部に発生することが多く、1歳以上では卵巣に発生する割合が高くなります。全体としては比較的まれな腫瘍ですが、小児外科領域では一定数みられる代表的な腫瘍のひとつです。
 

症状

症状は腫瘍が発生する部位によって異なります。頭蓋内に発生した場合には頭痛や嘔吐などの症状がみられることがあります。胸腔内や腹腔内に発生した場合には、腫瘍がある程度大きくなるまで症状が出ないことも多く、腹部のしこりや腫れとして気づかれることがあります。
新生児に多い仙尾部奇形腫では、出生前の超音波検査で発見されることもあります。また悪性胚細胞腫瘍では、腫瘍マーカーであるAFP(αフェトプロテイン)が高値を示すことが多く、診断や治療効果の判定に役立ちます。
 

治療

治療は腫瘍の種類と進行度によって異なりますが、基本は手術による切除です。
成熟奇形腫および多くの未熟奇形腫では、腫瘍を完全に切除することで治癒が期待できます。ただしまれに再発することがあるため、術後も一定期間の経過観察が必要です。特に仙尾部奇形腫では再発予防のため尾骨を含めて切除することが重要とされています。
悪性胚細胞腫瘍では、手術に加えて化学療法を組み合わせた治療を行います。小児の悪性胚細胞腫瘍ではシスプラチンを中心とした化学療法が高い効果を示し、多くの患者さんで治癒が期待できます。腫瘍マーカー(AFPなど)の値は治療効果の判定や再発の早期発見に重要な役割を果たします。
腫瘍の発生部位や広がりによっては、手術前に化学療法を行い腫瘍を小さくしてから切除する場合もあります。
 

治療成績

成熟奇形腫を含む良性腫瘍の治療成績は非常に良好であり、完全切除により治癒が期待できます。
悪性胚細胞腫瘍についても、現在では化学療法の進歩により全体の5年生存率は90%程度と報告されており、比較的良好な治療成績が得られています。ただし、転移を伴う場合や縦隔に発生した症例では治療が難しい場合もあり、さらなる治療成績の向上が期待されています。
現在も国際的な臨床研究が行われており、副作用を減らしながら治療効果を高める取り組みが進められています。
 

外部リンク

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