小児外科で治療する病気

胚細胞性腫瘍

発生
 胚細胞腫瘍は胚細胞(卵子,精子)のもとになる細胞(原始生殖細胞)が腫瘍化したもので,性腺(卵巣,精巣)から発生する ものが半数以上を占めます.卵巣や精巣以外からも発生することがあり,これは胎生期に原始生殖細胞が体の他の部位に迷い込んだもの(迷入組織)が発生母地と考えられており,頭蓋内から仙尾部まで体の至る所から発生し,頭蓋内,頚部,縦隔,後腹膜,性線(卵巣,精巣),仙尾部に好発します.

分類
 原始生殖細胞は体を構成するすべての細胞の元であり,あらゆる細胞に分化成熟する能力(多分化能)を持っています.そのため,それが腫瘍化した胚細胞腫瘍の分化度,組織型は多彩であり,1)ほぼ完全に成熟した細胞からなる良性の成熟奇形腫,2)未分化な細胞で構成される絨毛がんや卵黄嚢がん等の悪性胚細胞腫瘍,3)その中間の未熟奇形腫があります.さらにこれらの成分が混在しているものもみられます.

頻度
 日本小児外科学会悪性腫瘍委員会の集計によると,2017年に日本で発生した数は,成熟奇形腫が104例,未熟奇形腫が20例,悪性胚細胞腫瘍が34例,その他(分類不能型など)が3例となっており,半数以上が良性の成熟奇形腫です.部位別に発生した数は,1歳未満の半分近くが仙尾部で最も多く,1歳以上では卵巣が102例(79%)とほとんどを占めています.

症状
 発生部位により様々です.頭蓋内のものは嘔吐や頭痛など.胸腔内や腹腔内の場合には腫瘍がある程度大きくなるまで症状のないことが多いようです.また,新生児にみられる仙尾部奇形腫では,胎児超音波検査などで出生前に見つかることがあります.腫瘍マ-カ-としてAFPがあります.

治療
 原則として手術による切除が行われます.成熟奇形腫や未熟奇形腫は切除のみ治癒が行われますが,まれに再発することがあります.悪性胚細胞腫瘍では,その進行度に応じて,手術治療,化学療法,放射線療法を組み合わせた治療を行います.

治療の現状
 良性腫瘍の中でも,新生児の巨大仙尾部奇形腫は特に手術が困難な事があります.悪性胚細胞腫瘍の治療5年後に生存している確率(5年生存率)は全体で90%と比較的良好です.しかし,離れた部位に転移がある症例(病期Ⅳ)では77%,原発の部位が縦隔の症例では60%といまだに不良で,更なる改善が望まれます.主な死因は腫瘍の再発,腫瘍からの出血,また治療中の合併症によるものなどです.

外部リンク