小児外科で治療する病気

腹壁破裂

腹壁破裂とは
先天的に(生まれつき)、赤ちゃんのへその緒より右側の腹壁(お腹)が欠損(穴が開いていること)しており、本来お腹のなかにあるはずの臓器(小腸・胃・結腸・肝臓など)の一部が、そのままお腹の外に脱出している状態(図1)で生まれる病気です。この病気は出生5000~10000人に1人くらいと稀な疾患で、胎生3~4週頃に生じる腹壁の形成不全(形成が十分に行われないこと)などが原因と言われています。遺伝子異常などの遺伝性疾患ではありません。
低出生体重児(未熟児)に発生することが多く、出生後すぐに治療を行う必要があります。治療を行わなければ、お腹の中が感染したり、脱出した臓器から体内の水分や体温が奪われ、脱水や低体温になることで死亡することもあり得ます。
上述のように、お母さんのお腹の中にいるときの超音波検査で診断(出生前診断)されない場合は、出生直後に緊急で対応する必要がありますが、最近は出生前診断をされることが多く、手術の準備をしたうえで出産していただき、直ちに赤ちゃんの治療を行うことができるようになったため、救命率が向上しています。

併存疾患(他に合併している病気)
 ほぼすべての赤ちゃんに、腸回転異常症を伴います。また稀ですが、臍腸管遺残症(メッケル憩室など)や小腸閉鎖症の合併も見られることがあります(各病気に関しては他頁を参照してください)。

治療法
上述のように直ちに手術を行いますが、脱出した臓器の内容、量、赤ちゃんの腹腔内容積(胎児期から脱出しているため、お腹の成長が乏しく、脱出した臓器を収めるだけの容積がない)に依存します。一期的腹壁閉鎖術といって、一回の手術で脱出した臓器をすべてお腹の中に戻して腹壁を閉鎖する方法と、多期的腹壁閉鎖術(サイロ(図2)といって仮の腹壁を形成した後に脱出した臓器を徐々に腹腔内に戻し(図3)、最終的に腹壁を閉鎖する方法)にわかれます。また近年ではsutureless法(図4)といって腹壁をあえて縫わずに腹壁が自然に閉鎖する力を利用した閉鎖法も行われています。Sutureless法の場合、腹壁の欠損部の縫合痕ができないため、美容的な面では有効な方法であると言えますが、臍ヘルニア(図5)の発生が多いと言われており、後に臍ヘルニアに対する手術が必要になることがあります。

最後
生まれた直後からの管理、治療後の管理と厳重かつ継続的な管理を必要とするため、経験を積んだ小児外科医(小児外科専門医)だけでなく、新生児科(小児科の中で特に新生児を専門にするグループ)を含めたチーム医療が重要です。もし妊婦健診でお腹の赤ちゃんが腹壁破裂と診断されたり、疑われた場合は、小児外科、新生児科、産科のある施設に移っていただいて出産されることが望ましいです。かかりつけ主治医の産科の先生とご相談ください。
(*写真の掲載は、ご家族の許可を得て掲載しております。)

図1 腹壁から小腸と大腸の一部が脱出しています。

図2-1 脱出した腸を器具で覆います

図2-2 糸で縛り、脱出腸管を徐々に腹腔内に還納します

図3 ほぼ腹腔内に還納されています

図4-1 テープだけで腹壁を閉鎖しています

図4-2 2週間後、ほぼ腹壁は閉鎖しています

図5 腹壁破裂の創はなく、臍ヘルニアになっています

外部リンク