学会概要
名称 一般社団法人 日本小児外科学会
所在地 〒112-0012 東京都文京区大塚5-3-13 3F
一般社団法人 学会支援機構内
TEL 03-5981-6019
FAX 03-5981-6012
代表者 理事長 家入 里志

沿革

芽生え

我が国において小児外科診療が本格的に始まったのは、終戦後の復興が進んだ昭和30年(1955年)前後のことです。しかし当時、小児外科診療を専門的に行う施設はごく限られていました。

1958年、福岡で開催された日本外科学会総会において、共同研究として「小児外科」が取り上げられたことを契機に、小児外科を独立した専門領域として発展させようという機運が次第に高まりました。1959年には、当時きわめて治療が困難とされていた先天性食道閉鎖症の手術成功例が日本大学と大阪大学から報告され、大きな反響を呼びました。

1960年秋には東京小児外科懇談会が発足し、続いて近畿小児外科懇談会も設立されました。こうした研究会・懇談会を通じて、小児外科を志す外科医が小児科、産科、麻酔科をはじめとする関連診療科の医師と議論する機会が増え、小児、特に新生児外科疾患の早期診断や、術前・術中・術後管理は急速に進歩していきました。

受胎

こうして機運が熟し、1963年12月、小児外科学会設立相談会が東京で開催されました。この相談会には、若林修(日本大学)を中心に、葛西森夫(東北大学)、駿河敬次郎(賛育会病院)、植田隆(大阪大学)、柳沢文憲(千葉大学)、萩原徹(京都府立医科大学)、森田建(日本大学)が世話人として参画しました。

1964年1月には、世話人の呼びかけによって日本小児外科学会設立発起人会が開催され、初代会長に若林修が選出されました。同時に、小児科、脳神経外科、麻酔科、産科、泌尿器科、整形外科など幅広い関連領域の医師の参画のもと、第1回学術集会を同年6月に開催することが決定しました。

誕生

第1回日本小児外科学会総会ならびに学術集会は、1964年6月15日、16日の両日、東京・新宿の朝日生命ホールで開催されました。
当時の会員数は1,041名で、そのうち実に1,019名が学術集会に出席しました。応募演題は161題にのぼり、このほか会長講演、特別講演1題、教育講演6題、シンポジウム2題、スモールグループ討論4題が行われました。当時の年会費は1,500円、学術集会参加費は300円でした。

こうして日本小児外科学会は、我が国における小児外科診療・研究・教育の発展を担う学術団体として、その第一歩を踏み出しました。

新生児外科集計

学会が設立された1964年、我が国における新生児外科症例は682例でした。この集計結果は、第2回学術集会において福田保会長の会長講演の中で報告されました。

その後、新生児外科症例の全国集計は5年ごとに実施され、我が国における新生児外科診療の実態と進歩を記録する重要な資料となりました。診断技術、麻酔、新生児集中治療、周術期管理、手術手技などの進歩とともに、新生児外科疾患の治療成績も大きく向上していきました。

小児外科セミナー

発足当時、小児外科はまだ若い学問領域であり、学会はその普及と次世代を担う医師の育成にも力を注ぎました。その一環として年1回「小児外科セミナー」を開催し、若手小児外科医の知識・技術の向上を図るとともに、関連診療科の若手医師にも小児外科診療への理解を深めてもらう機会を提供しました。

当時のセミナーは5日間にわたり、講師と受講生が寝食を共にしながら夜遅くまで討論を重ねることが慣例となっていました。この密度の高い教育の場は、小児外科医の育成と我が国における小児外科の普及に大きく貢献しました。

1985年以降は「日本小児外科学会卒後教育セミナー」へと発展し、現在も次世代の小児外科医を育成する重要な教育活動として受け継がれています。

元服 ― 専門領域としての確立

長年にわたる小児外科医の努力が認められ、1975年、日本小児外科学会は日本医学会の分科会として認定されました。さらに1978年10月には、それまで外科の一領域として位置づけられていた「小児外科」が独立した標榜診療科として認められ、全国に小児外科を標榜する医療機関が広がっていきました。

一方、本学会では、こどもたちに安全で質の高い外科医療を提供するためには専門性を担保する制度が不可欠との考えから、標榜科として認可される以前より認定医制度の導入に取り組んでいました。

1979年5月17日に認定医制度が発足し、その後、専門医認定制協議会、外科関連専門医認定委員会などとの協議を経て、認定医制度から専門医制度へ移行しました。2002年1月1日には日本小児外科学会専門医制度が発足し、小児外科医療の質を支える重要な基盤となっています。

秋季シンポジウム

学会の発展とともに学術集会への応募演題数は年々増加し、3日間にわたる学術集会だけでは十分な討論の場を確保することが難しくなってきました。

そこで1985年から、疾患や治療法など特定のテーマについて集中的に議論する「秋季シンポジウム」が開催されるようになりました。以来、学術集会とともに、小児外科の重要な課題を深く議論し、新たな診療や研究の方向性を示す学術活動の場として発展してきました。

法人化 ― 社会的責任を担う学術団体へ

学会の活動が拡大し、その社会的役割が大きくなるにつれて、組織としての基盤と社会的責任をより明確にすることも重要となりました。

日本小児外科学会では、学会設立当初から法人化が将来の目標の一つとして考えられていました。長年にわたる検討を経て、2003年に「特定非営利活動法人日本小児外科学会」へ移行し、学術活動のみならず、小児外科医療の普及・発展を通じて社会に貢献する組織として、その基盤を整備しました。

その後、社会情勢や法制度の変化に柔軟かつ迅速に対応し、学術団体としての活動をさらに発展させるため、2019年4月に「一般社団法人日本小児外科学会」へ法人格を移行しました。

一般社団法人化により、学会運営の透明性と継続性を確保するとともに、専門医の育成、学術研究、教育、国際交流、行政・関連団体との連携など、学会が担う幅広い活動をより安定した組織基盤のもとで推進する体制が整えられました。

診療・研究の発展

学会創設以来、小児外科診療は大きな進歩を遂げてきました。新生児外科の治療成績向上に加え、出生前診断に基づく周産期医療、小児がんにおける集学的治療としての外科手術、臓器移植、内視鏡外科手術をはじめとする低侵襲手術、さらにはロボット支援手術など、新たな診断・治療技術が次々と導入されています。

また、全国規模の症例登録や多施設共同研究の推進により、希少疾患を多く扱う小児外科においても、より質の高いエビデンスを創出するための基盤が整備されてきました。

小児外科は、単に「小さなこどもを手術する外科」ではありません。出生前から新生児期、乳幼児期、学童期、思春期、さらには成人期への移行まで、こどもの成長と発達に寄り添いながら長期的な視点で診療を行う専門領域へと発展しています。

国際交流

日本小児外科学会は、発足当初から国際交流を重視してきました。学術集会には海外の著名な小児外科医を招聘し、世界の最新の知識や技術を学ぶとともに、日本からも診療・研究成果を積極的に世界へ発信してきました。

近年では、欧米のみならずアジアをはじめとする世界各国・地域との交流が一層活発となり、海外の小児外科学会や国際組織との連携、国際共同研究、若手小児外科医の交流や海外での活動支援などを進めています。

日本の小児外科が培ってきた知識と技術を世界に発信するとともに、世界から学び、ともに発展することで、世界のこどもたちの外科医療の向上に貢献することを目指しています。

学術活動と社会への貢献

現在、日本小児外科学会は、我が国の小児外科診療・研究・教育を支える中心的な学術団体として活動しています。

学術集会、秋季シンポジウム、教育セミナーなどの開催に加え、専門医の育成、診療ガイドラインの策定、全国調査・症例登録、多施設共同研究、若手小児外科医への研究支援、国際交流など、その活動は多岐にわたっています。
また、小児外科医療を取り巻く環境の変化に対応し、医療安全、医療倫理、働き方改革、ダイバーシティ、災害医療、移行期医療など、さまざまな社会的課題にも取り組んでいます。

小児外科医だけでなく、小児科、産科、麻酔科、泌尿器科、救急医療をはじめとする関連診療科、多職種、関連学術団体、行政、そして患者・家族との連携を深めながら、こどもたちにより良い外科医療を届けるための活動を続けています。

新たな時代へ

創立60周年を越え、日本小児外科学会は新たな時代に向けた歩みを進めています。
我が国では少子化が急速に進む一方、小児外科が対象とする疾患の多くは希少疾患です。専門性の高い小児外科医療を将来にわたって安定して提供するためには、診療体制の整備とともに、次世代を担う小児外科医の育成がますます重要となっています。

本学会では、若手小児外科医の育成を重要な課題の一つと位置づけ、教育機会の充実に加え、若手医師が主体的に学会活動へ参画できる環境の整備、研究活動への支援、国際学会への参加や国際交流の支援など、次世代の臨床・研究・教育を担う人材を育てるための取り組みを進めています。

また、希少疾患を対象とする小児外科だからこそ、施設や地域、さらには国境を越えた連携が不可欠です。全国規模の症例登録、多施設共同研究、関連診療科・学術団体との連携、国際共同研究などを通じて、より質の高いエビデンスを創出し、世界の小児外科医療に貢献することを目指していま

国際的には、アジアをはじめ世界各国・地域の小児外科医との交流をさらに発展させ、World Federation of Associations of Pediatric Surgeons(WOFAPS)をはじめとする国際組織や海外の小児外科学会との連携を強化しています。国際共同研究、若手医師の交流、教育活動などを通じて、日本の小児外科が培ってきた知識と技術を世界に発信するとともに、世界から学び、ともに発展することを目指しています。

さらに、胎児手術や内視鏡外科手術やロボット支援手術をはじめとする低侵襲手術、デジタル技術、遠隔医療、AIなど、医療を取り巻く技術革新も急速に進んでいます。こうした新しい技術を積極的に取り入れながら、その安全性と有効性を科学的に検証し、こどもたちにとって真に有益な医療へとつなげていくことも、本学会の重要な使命です。

同時に、医療安全、倫理、働き方、ダイバーシティ、災害への対応、成人期への移行支援など、医学・医療だけでは解決できない課題にも向き合っていかなければなりません。関連診療科や多職種、患者・家族、行政、そして社会との連携を深めながら、こどもたちを中心とした医療を実現していくことが求められています。

60年以上にわたり先人たちが築いてきた歴史と伝統を大切にしながら、時代の変化を受け入れ、新しい小児外科を創り出していく――日本小児外科学会は今、新たな一歩を踏み出しています。

そして未来へ

1964年の創立以来、日本小児外科学会は、常に「こどもたちにより良い外科医療を届ける」という思いとともに歩んできました。

新生児外科を中心とした黎明期から、専門医制度の確立、出生前診断・胎児治療、再生医療、内視鏡外科手術、ロボット支援手術、デジタル技術、AIへと、小児外科を取り巻く医療は大きく変化しています。

一方、少子化、疾患の希少化、小児外科医の育成、医療提供体制の地域差、働き方改革、成人期への移行支援など、これまでとは異なる新たな課題にも直面しています。

これまで先人たちが築き上げてきた歴史と伝統を次の世代へ受け継ぎ、国内外との連携をさらに深め、新しい知識と技術を創出し続けること。それが、これからの日本小児外科学会の使命です。

すべては、こどもたちの幸せと未来のために。

日本小児外科学会は、これからもこどもたちに最善の外科医療を届けるため、未来に向かって歩み続けます。

2026年10月1日
文責:一般社団法人日本小児外科学会 理事長 家入 里志

外部リンク

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