概要
血管やリンパ管などの「脈管(みゃっかん)」に関係する病気は、現在ではISSVA分類(国際分類)に基づき、「脈管性腫瘍」と「脈管奇形」の2つに分けて考えられています。両者は見た目が似ていることもありますが、原因や治療方法が異なる別の病気です。
脈管性腫瘍は血管を構成する細胞が増殖してできる腫瘍で、小児で最も多いものは乳児血管腫です。乳児血管腫は以前「いちご状血管腫」と呼ばれていたもので、比較的よくみられる良性の腫瘍です。
一方、脈管奇形は生まれつき血管やリンパ管の構造に異常がある病気であり、腫瘍ではありません。代表的なものとしてリンパ管奇形(以前はリンパ管腫と呼ばれていました)や静脈奇形などがあります。
ここでは、小児で比較的よくみられる血管腫とリンパ管奇形について説明します。
血管腫(乳児血管腫)
症状
乳児血管腫は、生後数週間から数か月以内に皮膚の赤いふくらみとして気づかれることが多く、頭や顔を中心に体のさまざまな場所に生じます(図1)。多くの場合、1歳頃まで大きくなりますが、その後は自然に小さくなり、学童期頃までには目立たなくなることが一般的です。
良性の腫瘍ですが、大きくなった場所によっては体の機能に影響が出ることがあります。たとえば、まぶたの周囲では視力の発達に影響する可能性があり、口やのどの近くでは呼吸や哺乳に影響することがあります。また、潰瘍や出血、感染を起こすことや、整容面で問題になることもあります。このような場合には治療が検討されます。
まれにカポジ様血管内皮腫(KHE)などの特殊な脈管性腫瘍では、血小板が腫瘍内で消費されることで血が止まりにくくなるカサバッハ・メリット現象を伴うことがあります。このような場合には専門的な治療が必要となります(図2)。
治療
現在、乳児血管腫の治療として最も一般的に行われているのは、β遮断薬(プロプラノロール)の内服治療です。この薬により血管腫の増殖が抑えられ、多くの場合で縮小が期待できます。
病変の大きさや部位、症状に応じて、外用薬、レーザー治療、手術などが選択されることもあります。治療が必要かどうかについては、血管腫の大きさや位置、症状などを考慮して判断します。
図1 乳児血管腫(いちご状血管腫)
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図2 肝血管内皮腫のCT画像(肝臓にできた脈管性腫瘍の一つでカサバッハ・メリット症候群や心不全をおこすことがあります。)
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リンパ管奇形(旧:リンパ管腫)
概要
リンパ管奇形は、生まれつきリンパ管の構造に異常があることにより、リンパ液がたまる袋状の構造が形成される病気です。以前はリンパ管腫と呼ばれていましたが、腫瘍ではなく構造異常であることから、現在ではリンパ管奇形と呼ばれています(図3)。
首やわきの下、縦隔(胸の中)、お腹の中、口の中などさまざまな部位に発生します。出生前の超音波検査で発見されることもあり、病変の場所や大きさによっては、小児外科医の立ち会いのもとで出産計画が立てられることもあります。
症状
リンパ管奇形はゆっくりと大きくなることが多いですが、出血や感染をきっかけに急に腫れが大きくなることがあります。その際には痛みや発熱を伴うことがあります。
病変の場所によっては周囲の臓器を圧迫し、症状が現れることがあります。たとえば首にある場合は気道を圧迫して呼吸に影響が出ることがあり、口の中にある場合は哺乳や食事が難しくなることがあります。また腹部の場合は腹痛などの症状がみられることがあります。
治療
治療は病変の大きさや場所、症状に応じて選択されます。現在最も一般的に行われている治療は硬化療法で、リンパ管奇形の袋の中に薬剤を注入し、その反応によって病変を縮小させる方法です。複数回の治療が必要になることもありますが、傷が残りにくいという利点があります。一方で、治療後に一時的な腫れや発熱がみられることがあります。
外科手術は、病変を完全に切除できる場合には根治が期待できますが、リンパ管奇形は神経や血管、筋肉の間に入り込むように広がることがあるため、完全に取り切ることが難しい場合もあります。そのような場合には部分的な切除や他の治療法を組み合わせて治療を行います。
近年、リンパ管奇形や血管奇形に対する薬物療法として、mTOR阻害薬であるラパリムス(シロリムス)の有効性が報告されており、重要な治療選択肢となってきています。この薬は、異常な脈管の増殖に関係するシグナル経路を抑えることで、病変の縮小や炎症症状の改善が期待されます。
また、小児外科領域では、漢方薬のリンパ管奇形に対する有効性も注目されています。
図3 リンパ管奇形(リンパ管腫)
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