皆さんの母国である日本は,教育や社会保障,あるいは環境保全など人類にとってもっとも重要な社会的共通資本(宇沢弘文東大名誉教授)の面では,国際的にとても遅れていると言わざるを得ません.とりわけ教育や医療において「こどもを大切にする」という視点では,とても先進国とは言えないのが現状です.そのようななか,あまりの少子高齢化の到来に目が覚めたのか,国(国民)もようやくこどもの大切さに気がついたようです.改めて言いますが,こどもは国の「たから」です.こどもを大切にしない国は何れ崩壊への道を辿ると言われています. 小児医療とは,かくも大切なこども達の健康と福祉のためにあるものであり,その中でもこども達の外科的疾患に対して責任ある医療を担当するのが小児外科です.只,こども達の身体や機能を治せば良いというものではありません.こども達の将来のために「こころの悩み」を払拭してあげなければなりません.また病気のこども達にはご家族や兄弟がいます.外科的疾患を持つこどもの廻りの世界すべてを治療するのが小児外科医です.さらに言うならば人類のため社会のためにおおくの可能性を秘めたこども達の医療に携われる,こんなやりがいのある職種は他にそんなに多くはありません. 現状では「小児医療は厳しい,きつい,もうからない」と良く言われます.わが国の診療報酬上でのこのところの小児医療への追い風を基に,今後この面での更なる改善が期待されます.目指せ小児医療を,来れ小児外科に! 私の経験から,医療を志し小児医療を全うした暁には,必ずや達成感,満足感が得られることを保証します.メッセージの最後に,古典落語「子別れ」の一節「かくばかり偽り多き世の中に,子の可愛さはまことなりけり」を贈ります. |
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日本小児外科学会名誉会員,東北大学名誉教授 地方独立行政法人宮城県立こども病院院長 大井龍司 (おおい・りょうじ) 1965年 東北大学医学部卒業後,東北大学医学部附属病院でインターン 日本外科学会理事,評議員 American Academy of Pediatrics 名誉会員 |