日本小児外科学会雑誌
Online ISSN : 2187-4247
Print ISSN : 0288-609X
ISSN-L : 0288-609X
60 巻, 2 号
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
おしらせ
追悼文
原著
  • ―精巣萎縮に注目して―
    増田 吉朗, 小幡 聡, 近藤 琢也, 福田 篤久, 川久保 尚徳, 栁 佑典, 永田 公二, 宮田 潤子, 松浦 俊治, 田尻 達郎
    2024 年 60 巻 2 号 p. 147-152
    発行日: 2024/04/20
    公開日: 2024/04/25
    ジャーナル オープンアクセス

    【目的】急性精巣上体炎は急性陰囊症と総称される疾患の一つで,比較的頻度の高い疾患である.精巣予後が良好な疾患であるが,近年発症後に精巣萎縮を来した報告があり,当施設でも同様の症例を経験した.小児急性精巣上体炎の治療方針について改めて検討すべく,当施設で経験した症例を後方視的に検討したので報告する.

    【方法】2008年4月~2022年4月の期間中に急性精巣上体炎と診断され治療を行った77例を対象とし(再発例を除く),年齢,患側,発症から来院までの時間,臨床症状,身体所見,検査所見,治療内容,転帰について診療録を元に後方視的に検討した.

    【結果】発症時年齢は1か月~14歳(中央値8歳),患側は右側36例,左側40例,両側1例,発症から受診までの時間は中央値8時間(IQR,5~14.5時間)であった.症状は,陰囊痛75例(97%),陰囊の腫脹44例(57%),発赤28例(36%),腹痛8例(10%),発熱5例(7%)であった.治療後の経過観察は,再診し経過観察をした症例が65例(84%)で,有事再診のみが12例(16%),観察期間の中央値は40日(IQR,7~249日)であった.精巣予後は,治療後1か月以上経過が追えた症例が33例(43%),そのうち精巣萎縮を来した症例を1例認めた.萎縮を来した症例は,経過より,精巣上体炎の波及から精巣炎を来したものと考えられた.

    【結論】急性精巣上体炎は精巣予後良好な疾患だが,稀に精巣炎への波及を来し精巣萎縮の原因となる可能性があり,炎症が強い症例は長期的な観察も考慮するべきである.そのために,治療方針や経過観察期間の一定の基準が求められる.

  • 駒橋 充, 石岡 茂樹, 細田 利史
    2024 年 60 巻 2 号 p. 153-157
    発行日: 2024/04/20
    公開日: 2024/04/25
    ジャーナル オープンアクセス

    【目的】近年,多くの施設で小児鼠径ヘルニアに対してlaparoscopic percutaneous extraperitoneal closure(以下,LPEC)が標準術式とされている.片側の鼠径ヘルニアの場合,術中に対側の内鼠径輪の開大を認めることがあり,多くの施設では症状がなくても発症予防に手術をしていると思われる.しかし,対側開大例全例に予防手術をすることについては過大手術とする考えもあり一致した見解は得られていない.予防手術の適応を決めるために当科で経験した症例を検討した.

    【方法】当科で手術した術前診断が片側鼠径ヘルニアでLPECを施行した259例を対象とした.対側腹膜鞘状突起開存例のうち,男児では10 mm以上,女児では5 mm以上の開大を認めた症例のみに予防手術を行った.術後対側発症の有無を含め診療録をもとに後方視的に検討した.

    【結果】5例に術後対側発症を認めた.術中に対側腹膜鞘状突起開存を認めたのは95例(36%)であり,そのうち当科の処置基準に基づき処置を行ったのは46例で49例は経過観察とした.術後対側発症した5例中4例は経過観察した症例(対側非介入症例の1.9%)であり,1例は対側処置後の再発であった.

    【結論】当科ではなるべく対側処置を行わない方針としており,対側予防手術をする症例を限定しているが,術後対側発症率は既報告と比較して低かった.対側予防手術は対側開大が男児で10 mm以上,女児で5 mm以上の開大を基準とできる可能性が示唆された.長期的な経過を含め,今後の症例の蓄積による検討が望まれる.

  • 中目 和彦, 桝屋 隆太, 永澤 俊, 中川 緑, 山田 愛, 木下 真理子, 上村 幸代, 盛武 浩, 家入 里志, 七島 篤志
    2024 年 60 巻 2 号 p. 158-165
    発行日: 2024/04/20
    公開日: 2024/04/25
    ジャーナル オープンアクセス

    【目的】中心静脈カテーテル(CVC)は小児血液・悪性固形腫瘍患者の治療において使用される.近年,安全なCVC挿入法としてin-plane法を用いた超音波(US)ガイド下鎖骨上アプローチによる腕頭静脈穿刺CVC挿入術が報告されている.

    【方法】小児血液・悪性固形腫瘍患者を対象にout-of-plane法を用いて内頸静脈にトンネル型CVCを挿入した群(IJV群)とin-plane法を用いて腕頭静脈に挿入した群(BCV群)について患者背景,手術成績,合併症を後方視的に比較検討した.

    【結果】34名の患者に対し,計40回(IJV群:n=15,BCV群:n=25)のトンネル型CVCが挿入された.患者背景,術前血液凝固検査値は両群間に有意差はなかった.手術時間中央値(IQR)はIJV群:30分(27~33),BCV群:25.8分(22~27)であり,BCV群で有意に手術時間が短縮された(p=0.0026).術中合併症はIJV群で1例(6.7%)認め,BCV群では認めなかった.CVC維持管理中の合併症はIJV群:10例(66.7%),BCV群:17例(68%)であり,両群間で有意差は認めなかった.カテーテル関連血流感染はIJV群:10例(66.7%),BCV群:12例(52%)に認め,有意差はみられなかった.CVC留置期間中央値(IQR)はIJV群:273日(172~363.5),BCV群:152日(101~280)であり有意差を認めなかった.

    【結論】リアルタイム超音波ガイド下鎖骨上アプローチによる腕頭静脈穿刺術は小児血液・悪性固形患者に対しても安全な手技と考えられた.

症例報告
  • 丸田 祥平, 牟田 裕紀, 小高 明雄, 井上 成一朗, 竹内 優太, 駒込 昌彦, 小暮 亮太, 別宮 好文, 朴 英智, 秦 怜志
    2024 年 60 巻 2 号 p. 166-171
    発行日: 2024/04/20
    公開日: 2024/04/25
    ジャーナル オープンアクセス

    脾臓摘出術後の重篤な合併症として門脈・脾静脈血栓症が知られている.症例は10歳女児.転倒し腹部打撲後に前医へ救急搬送となった.腹部造影CTで巨大脾血管腫が疑われたが悪性疾患の可能性も考慮し,待機的に脾動脈塞栓術を施行し,腹部造影CTで腫瘍径,門脈径,脾静脈径の縮小を確認後,脾臓摘出術を施行した.術後6日目の腹部造影CTで脾静脈血栓を認めた.加えて血小板数の上昇を認めたため,アスピリン4 mg/kg/日の内服を開始した.その後,血小板数は低下傾向となり,術後25日目の超音波検査で脾静脈血栓の消失を確認でき,幸い門脈血栓症に至ることはなかった.小児における脾臓摘出術後門脈血栓症の報告は少ないが,脾摘後脾静脈血栓症がみられた症例ではその可能性を念頭においた周術期管理が望ましいと考えられる.

  • ―本邦報告24例からみた臨床的特徴―
    久田 正昭, 渋井 勇一, 武本 淳吉, 宗崎 良太, 孝橋 賢一, 木下 義晶, 田口 智章, 田尻 達郎, 家入 里志, 高槻 光寿
    2024 年 60 巻 2 号 p. 172-180
    発行日: 2024/04/20
    公開日: 2024/04/25
    ジャーナル オープンアクセス

    症例は10歳1か月の男児.軽度の精神発達遅滞と成長ホルモン分泌不全性低身長症のため前医小児科にて経過観察されていた.9歳10か月時に急激な二次性徴進行と成長率増加,骨年齢促進を認めたため,前医に精査入院したところ,GnRH依存性思春期早発症の診断に加えて,精巣腫瘍が疑われ当施設へ紹介された.左精巣内に超音波検査で10 mm大の低エコー域およびPET-CTでの集積を認め,悪性を否定できず左高位精巣摘出術を施行した.病理診断はLeydig細胞腫(以下本症と称す)で,悪性所見は認めなかった.本症の本邦小児報告は少なく,本症例を含め24例であり,術前よりGnRH依存性思春期早発症の診断がなされたのは本症例のみであった.本邦小児報告例の臨床的特徴から,思春期前に過成長(年齢に不相応な成長率増加)を認めた場合,本症を鑑別し,精巣超音波検査を含めた精査を行うことで早期診断が得られる可能性が示唆された.

  • 有留 法史, 川久保 尚徳, 松浦 俊治, 玉城 昭彦, 孝橋 賢一, 小田 義直, 田尻 達郎
    2024 年 60 巻 2 号 p. 181-185
    発行日: 2024/04/20
    公開日: 2024/04/25
    ジャーナル オープンアクセス

    症例は11歳女児,腸炎の先行感染を認め,激しい腹痛を主訴に受診となった.腹部超音波検査で下腹部正中にtarget sign,造影CTを撮像すると小腸-結腸型の腸重積を認め,腸重積症の診断となった.腹腔鏡下で手術を行ったが,整復が困難であったため開腹移行し,回腸内に隆起性の腫瘤性病変を認めたため小腸切除を行った.術後経過は良好であり,術後9日目に退院となった.最終病理結果では小腸リンパ管腫の診断となった.腸重積症の好発年齢は6か月から3歳未満であり,好発年齢外の年齢発症の多くはMeckel憩室,ポリープ,腫瘍性病変などの器質的疾患が起点となり腸重積が起こると言われており,リンパ管腫を原因とする報告は小児においては極めて少ない.今回小腸-結腸型腸重積症により発見された小腸内腔発生のリンパ管腫の症例を経験したため,過去の症例を踏まえて報告する.

  • 宮嵜 航, 近藤 剛, 野口 伸一
    2024 年 60 巻 2 号 p. 186-189
    発行日: 2024/04/20
    公開日: 2024/04/25
    ジャーナル オープンアクセス

    症例は9か月男児.脾弯曲部にcaliber changeを有する長域型ヒルシュスプルング病に対して日齢63に人工肛門造設術を施行した.月齢6頃の根治術を予定していたが,COVID-19の感染のため手術延期となり,月齢9に根治術目的で入院となった.術式は腹腔鏡補助下Swenson法を施行した.Pull-through腸管の腸間膜の切離は,辺縁血管を温存しながら,中結腸動脈を根部で処理し,回結腸及び右結腸動脈の血流を残す方針とした.腸間膜の脂肪が多く,血管が透見できなかったため,血管の同定にIndocyanine green(以下,ICG)蛍光法によるナビゲーションを併用した.腸間膜の切離後に,ICG蛍光法でpull-through腸管の断端の血流に問題がないことを確認し,肛門管に吻合し手術を終了した.現在,術後3か月であり,合併症なく経過している.ICG蛍光法は,腸間膜の血管の同定が困難な症例のpull-through腸管の血流温存に有用であると考える.

  • 武田 昌克, 遠藤 耕介, 鈴木 久美子, 上 和広, 松尾 宏一, 秦 浩一郎
    2024 年 60 巻 2 号 p. 190-194
    発行日: 2024/04/20
    公開日: 2024/04/25
    ジャーナル オープンアクセス

    症例:10歳女児.10歳時に痛みを伴わない右鼠径部膨隆が出現し,右鼠径ヘルニアと診断され,右LPEC手術が施行された.術後早期より右鼠径部に術後疼痛が認められた.保存的加療で改善なく痛みは持続し,術後5か月時,体育の欠席など影響が大きくなったため,術後疼痛に対し再手術を施行した.再手術は腹腔鏡で行い,初回手術時の縫合糸を除去し,再開通したヘルニア門は円靭帯や神経を巻き込まないように腹膜の縫合閉鎖を行った.再手術後,すぐに疼痛は消失し,1年経過後,ヘルニア再発,疼痛再燃は認めず良好に経過している.術後疼痛の原因の断定は困難であるが,神経障害によるものと推測した.文献検索では過去3例の報告を認めるのみであり,本症例を含め文献的考察を加え報告する.

  • 松島 正, 宮國 憲昭, 川谷 慶太, 杉原 哲郎, 梶 沙友里, 内田 豪気, 大橋 伸介, 黒部 仁, 大木 隆生
    2024 年 60 巻 2 号 p. 195-200
    発行日: 2024/04/20
    公開日: 2024/04/25
    ジャーナル オープンアクセス

    症例は13歳男児.友人に右陰囊を蹴り上げられ受傷し,疼痛が持続したため近医を受診,精巣破裂の疑いで当院紹介となった.超音波検査にて精巣を横断する低エコー域と不均一な低エコー域を認め,右精巣破裂及び陰囊内血腫と考えられた.また,ドプラ超音波検査にて右精巣内の血流低下を認めた.以上より外傷による精巣破裂と診断し,受傷後約9時間後に緊急手術を施行した.精巣白膜が断裂し,破裂した精巣実質が露出していたが,精巣は温存可能と判断し白膜修復術を施行した.外傷性精巣破裂の主要な原因はスポーツやバイクを主とする交通事故であるため,本邦における報告は成人例が多く,15歳以下の小児例は稀である.小児における外傷性精巣破裂を経験したため文献的考察を加えて報告する.

報告
研究会
あとがき
feedback
Top