日本小児外科学会雑誌
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59 巻, 6 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
おしらせ
追悼文
プログラム
原著
  • ―胃瘻周囲からの漏れに関連する因子及び長期胃瘻管理について―
    毛利 純子, 田中 修一, 里見 美和, 新美 教弘
    2023 年 59 巻 6 号 p. 965-972
    発行日: 2023/10/20
    公開日: 2023/10/20
    ジャーナル オープンアクセス

    【目的】重症心身障がい児(以下,重症児)における診療の中で,時に胃瘻周囲からの胃内容の漏れを経験する.漏れが軽度であれば保存的管理が可能であるが,胃瘻周囲の難治性皮膚炎となることもある.今回我々は胃瘻周囲からの漏れに対し胃瘻再造設術を要した例とその関連因子について検討した.

    【方法】当院で2003年1月から2021年12月に胃瘻造設術を施行された小児のうち,胃瘻を継続使用し当院及び関連施設で経過を観察されている218例を対象とし診療録を後方視的に検討した.

    【結果】全例が何らかの基礎疾患を有していた.その中で漏れによる瘻孔周囲炎のため胃瘻再造設術を施行された症例は6例(2.8%)であった.初回胃瘻造設から再造設術までの期間は中央値76か月(43~158か月)であった.再造設術を要した例は全例保存的治療での改善が認められず,手術的治療が選択された.再造設術を必要とした例に,基礎疾患,重症児該当の有無,噴門形成術の同時施行の有無の関与は認められなかった.術式の比較では腹腔鏡補助下内視鏡的胃瘻造設術(laparoscope assisted percutaneous endoscopic gastrostomy:以下LAPEG)と比較して,Stamm法による胃瘻造設例が胃瘻周囲の漏れから再造設術に至るリスクが有意に高かった.

    【結論】LAPEGはStamm法と比較して長期的に重篤な胃瘻周囲からの漏れを回避できる可能性が示唆された.また,小児胃瘻造設患者の中には,長期経過中に胃瘻周囲からの漏れにより胃瘻再造設を必要とすることがあることを認識し,適切な保存的治療を含む長期管理を心がけることが重要である.

  • 安部 孝俊, 冨田 瑞歩, 水島 穂波, 酒井 清祥
    2023 年 59 巻 6 号 p. 973-978
    発行日: 2023/10/20
    公開日: 2023/10/20
    ジャーナル オープンアクセス

    【目的】先天性囊胞性肺疾患において,術後に発症するものだけでなく術前からも漏斗胸を合併しやすいと言われている.一般的に肺切除術後には残存肺の代償性成長が起きるが,漏斗胸を合併した場合には胸腔が狭いために代償性成長が妨げられる可能性がある.そこで,当科において解剖学的肺切除術または分画肺摘出術を行った症例について,漏斗胸合併の有無に着目して術後の胸郭変形と手術の至適時期について後方視的に検討した.

    【方法】2008年7月~2021年6月の13年間に,当院において解剖学的肺切除を行った症例を対象とし,症例の背景,漏斗胸合併の有無,術前後での患側胸腔形態の変化,治療成績を診療録より後方視的に検討した.

    【結果】症例は6例であり,男児が3例,女児が3例であった.対象疾患は先天性肺気道奇形が3例,肺分画症が2例,肺膿瘍が1例であり,そのうち漏斗胸を合併していたのは2例であった.手術は肺葉切除術が4例,区域切除術が1例,分画肺摘出術が1例であり,漏斗胸合併症例は2例とも胸骨挙上術を同時に行っていなかった.術後の胸腔変形において,有意差を認めなかったものの漏斗胸を合併した症例では左右方向への縦隔の偏位は小さく,頭尾方向の変形が大きい傾向にあった.また,術後に撮影した胸部CT検査では2例とも胸骨陥凹が軽度改善していた.

    【結論】漏斗胸を合併した症例においては健側の残存肺が代償性成長を得られにくい可能性あるが,切除後に胸骨陥凹が改善傾向を認めることがあるため,特に切除肺の容積が小さいとき二期的手術を検討すべきである.

  • 楯川 幸弘, 都築 行広, 大城 清哲, 金城 僚, 福里 吉充
    2023 年 59 巻 6 号 p. 979-985
    発行日: 2023/10/20
    公開日: 2023/10/20
    ジャーナル オープンアクセス

    【目的】小児腸重積において,繰り返す重積が生じる場合には,器質的疾患を認めることがある.

    【方法】2007年から2022年まで当院小児外科にて,外科手術を行った腸重積18例について年齢,性別,手術方法,重積のタイプ,先進部の病変の有無等について検討した.

    【結果】①年齢;4か月から11歳で,平均38か月.1歳未満が7例で,全体の87.5%であった.②性別;男児12例,女児6例.男児に多い傾向があった.③手術方法;腹腔鏡手術10例,開腹手術7例,腹腔鏡手術から開腹手術への移行例1例.④重積タイプ;小腸-小腸型4例,小腸-結腸型12例,重積無し2例.⑤先進部病変の有無;無し10例,有り8例.内訳は,バーキットリンパ腫1例,メッケル憩室3例,パイエル板肥厚1例,虫垂1例,腸間膜リンパ節1例,Peutz-Jeghers型ポリープ1例.先進部病変で,メッケル憩室に対し小腸部分切除は2例,楔状切除は1例であった.バーキットリンパ腫1例とPeutz-Jeghers型ポリープ1例は,小腸部分切除を行った.⑥腸重積再発例:8例が再発を繰り返し,重積回数が2回の症例は5例,3回の症例は1例,4回の症例が2例であった.器質的疾患があったのは6例で,内訳はメッケル憩室2例,パイエル板肥厚1例,虫垂1例,腸間膜リンパ節1例,Peutz-Jeghers型ポリープ1例で,年齢では4か月,6か月,8か月,1歳5か月,3歳,9歳と5歳未満の症例が多くみられ,2回以上再発を繰り返す症例では腸重積のないときに病的先進部を診断できるかどうかは難しいと思われる.

    【結論】小児腸重積において,就学前の児童で繰り返し腸重積が生じる場合には,積極的に審査腹腔鏡を行い,原因検索を行うべきと考える.

症例報告
  • 篠原 彰太, 山根 裕介, 大関 圭祐, 吉田 拓哉, 田浦 康明, 小坂 太一郎, 江口 晋, 永安 武
    2023 年 59 巻 6 号 p. 986-990
    発行日: 2023/10/20
    公開日: 2023/10/20
    ジャーナル オープンアクセス

    症例は在宅中心静脈栄養を行っているヒルシュスプルング病類縁疾患の1歳11か月の男児.中心静脈カテーテル関連血流感染症(catheter related blood stream infection: CRBSI)を繰り返しており,定期外来で予防的エタノールロック療法を行っていた.受診4日前の定期外来時に,中心静脈カテーテル接続部のぬぐい培養を提出した.受診前夜に高熱が出現し,翌朝当科外来を受診した.ぬぐい培養でKlebsiella spp.が検出されていたこと,家庭環境から入院が困難であったことからセフトリアキソンナトリウム水和物(CTRX)による外来抗菌薬静注療法(outpatient parenteral antimicrobial therapy: OPAT)を選択した.外来でCTRX 60 mg/kgの静注及び2時間のエタノールロックを施行し,10日間の治療で治癒し得た.児の全身状態が保たれ,使用する抗菌薬が決定している場合は,OPATはCRBSIの治療選択の一つとなる可能性が示唆された.

  • 橋本 さつき, 浜田 弘巳, 横山 新一郎, 西堀 重樹, 縫 明大
    2023 年 59 巻 6 号 p. 991-996
    発行日: 2023/10/20
    公開日: 2023/10/20
    ジャーナル オープンアクセス

    小児バセドウ病の治療は抗甲状腺薬による薬物治療が主体であり,手術適応となる症例は少ない.バセドウ病に対する手術治療は薬物治療困難例でも早期に確実な治療効果が得られる一方で,症例ごとに術前の甲状腺機能のコントロール,術式選択などの検討が必要である.また手術に関連した合併症や長期的なホルモン補充の必要性,再発の可能性などのデメリットも念頭におく必要がある.今回我々は,薬物治療中に甲状腺腫の圧排により気道狭窄症状を呈した10歳7か月男児,抗甲状腺薬の高度副作用で薬物治療が継続困難となった12歳8か月女児,巨大甲状腺腫となった16歳7か月女児の3症例に対し手術を施行し,合併症や再発は認めなかったので報告する.

  • 鎌田 悠子, 水野 裕貴, 岡本 健太郎, 植木 里乃, 西潟 綾, 松岡 健太郎
    2023 年 59 巻 6 号 p. 997-1003
    発行日: 2023/10/20
    公開日: 2023/10/20
    ジャーナル オープンアクセス

    症例は3か月男児で,心室中隔欠損症に対し肺動脈絞扼術(日齢24),心臓カテーテル検査(日齢61)を施行後にCRP上昇を繰り返した.造影CTで上行結腸の部分的壁肥厚を認め,上下部消化管造影で腸回転異常と結腸狭窄を疑う所見を認めたため,日齢100に開腹術を施行した.術中所見で結腸固定不良と上行結腸の発赤・壁肥厚を認め,術中消化管内視鏡で同部位の高度狭窄を確認したため,結腸部分切除術を行った.術後CRPは速やかに陰性化した.病理検査で狭窄部の高度炎症と潰瘍形成,虚血性変化を認め,慢性虚血を原因とした結腸狭窄と考えられた.虚血を伴う乳児結腸狭窄について,壊死性腸炎を除く17報告中14例が心疾患の術後や心停止蘇生後など心血管系イベント後であり,本症例も心臓手術・カテーテル後に症状が顕在化していることから,因果関係は不明だが腸管虚血と何らかの関連がある可能性が考えられた.

  • 西田 ななこ, 春松 敏夫, 川野 孝文, 祁答院 千寛, 長野 綾香, 松井 まゆ, 杉田 光士郎, 大西 峻, 武藤 充, 家入 里志
    2023 年 59 巻 6 号 p. 1004-1008
    発行日: 2023/10/20
    公開日: 2023/10/20
    ジャーナル オープンアクセス

    思春期発症の卵管捻転は稀で,特異的な所見に乏しく診断に苦慮する.今回診断に時間を要した思春期発症の卵管捻転の症例を経験したので報告する.【症例】13歳の女児.当施設受診の1週間前からの左下腹部痛を主訴に近医を受診したが,急性腸炎の診断で経過観察となっていた.その後も腹痛が続き,近医小児科で膿瘍形成虫垂炎を疑われ抗菌薬加療が行われるも症状改善がなく,急性腹症が疑われ当施設紹介となった.造影CT検査では骨盤腔内に4 cm大の囊胞性病変を認め,付属器捻転の可能性を考え審査腹腔鏡を行った.子宮背側に暗赤色の捻転した左卵管を認め,腹腔鏡下操作での捻転解除は困難でPfannenstiel切開での開腹手術へと移行した.左卵巣は正常であったが左卵管は1,440°捻転し,捻転解除後も暗赤色調で温存は困難と判断し左卵管切除術を施行した.【結語】卵管捻転は診断に時間を要し最終的に卵管切除となる症例が多く温存には早期診断が重要であると考えられた.

  • 𠮷田 美奈, 山道 拓, 堺 貴彬, 高山 慶太, 宇賀 菜緒子, 梅田 聡, 前川 昌平, 臼井 規朗
    2023 年 59 巻 6 号 p. 1009-1013
    発行日: 2023/10/20
    公開日: 2023/10/20
    ジャーナル オープンアクセス

    経胃瘻的腸用カテーテル(以下PEG-Jカテーテル)は,使用可能な患児の体格に一定の基準がない.我々は1歳5か月,体重7.3 kgの幼児に胃瘻を通じて16Fr,長さ400 mmのPEG-Jカテーテルを留置し,十二指腸から結腸に穿通する合併症を経験したため報告する.留置2か月後,肛門よりカテーテルの先端が脱出した.腹部CT検査によりカテーテル先端による十二指腸結腸穿通と診断した.留置時から十二指腸水平脚付近でカテーテル先端が十二指腸壁を強く圧迫していたことが原因と考えられた.カテーテルを抜去して2週間保存的加療を行った後に,瘻孔の機能的閉鎖を確認した.乳幼児に対するPEG-Jカテーテル留置の適応は,デバイスの規格に対して適正な体格かを十分に検討すべきであり,特に10 kg以下の児には腸管穿孔に留意した観察が必要である.また,安定化した瘻孔は外科的介入を行わなくても自然閉鎖が期待できると考えられた.

  • 藤解 諒, 兒島 正人, 栗原 將, 佐伯 勇, 檜山 英三, 福井 嵩史, 仙谷 和弘, 高橋 信也
    2023 年 59 巻 6 号 p. 1014-1018
    発行日: 2023/10/20
    公開日: 2023/10/20
    ジャーナル オープンアクセス

    症例は9歳男児.背部痛を主訴に近医受診した際に左腎腫瘤を指摘され,当院紹介となった.腹部CTで左腎下部に石灰化を伴う長径20 mm大の乏血性腫瘤を認め,悪性腫瘍の可能性が否定できないことから,開腹での左下半腎切除術を行った.迅速病理検査で腎細胞癌の診断となり,肉眼的に切除断端には腫瘍の露出は認めなかったものの,腫瘍から腎門部への十分なmarginが確保できていない可能性を考慮し,引き続き左腎摘出術を行った.病理検査にて乳頭状腎細胞癌の診断となり,また腫瘍の一部には後腎性腺線維腫を認め,遺伝子解析を行ったところBRAF V600Eの変異が同定された.追加治療行うことなく経過観察とし,術後半年の時点で再発は認めていない.小児腎細胞癌の報告は非常にまれであり,臨床症状や病理組織型に特徴があるため,これらを踏まえ文献的考察を加えて報告する.

  • 牟田 裕紀, 小高 明雄, 井上 成一朗, 竹内 優太, 別宮 好文
    2023 年 59 巻 6 号 p. 1019-1023
    発行日: 2023/10/20
    公開日: 2023/10/20
    ジャーナル オープンアクセス

    症例は18歳,男児.脳性麻痺,てんかんに伴う経口摂取困難のため12歳時に噴門形成術と胃瘻造設術を施行した.イレウスのため緊急入院.高度な側弯に伴い肋骨弓と右腸骨,胃瘻に挟まれる間隙に小腸が内ヘルニアを呈し,腸管壊死を来したため小腸部分切除を施行した.その後内ヘルニアを再発しヘルニア門への大網充填を施行した.しかし,大網充填部の対側から胃瘻に乗り上げる形で小腸が頭側へ挙上しイレウスを発症した.胃瘻位置が繰り返すイレウスの原因の一因と考えられたため胃瘻位置変更を施行した.高度の側弯により単純な胃瘻位置変更は困難であったため,Hunt-Lawrence pouchを形成しpouchに代替胃瘻を造設することで,胃瘻造設を施行した.側弯に伴い胃瘻造設が困難な症例や胃瘻合併症を有する症例ではHunt-Lawrence pouchを用いた代替胃瘻造設は選択肢の一つとなりうる.

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