日本小児外科学会雑誌
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59 巻, 4 号
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おしらせ
追悼文
原著
  • 狩野 元宏, 藤野 明浩, 古金 遼也, 橋詰 直樹, 小林 完, 森 禎三郎, 渡辺 栄一郎, 髙橋 正貴, 米田 光宏, 金森 豊
    2023 年 59 巻 4 号 p. 741-746
    発行日: 2023/06/20
    公開日: 2023/06/20
    ジャーナル オープンアクセス

    【目的】小児でも胸腔鏡補助下手術が自然気胸の標準的治療選択肢の一つとして広く認知されている一方で,報告が少なく非手術治療(ドレナージ・経過観察)との使い分けや適応は定まっていない.本研究では当院での自然気胸の治療成績を後方視的にまとめ,治療方針について検証する.

    【方法】2003年1月から2020年12月までに当科で「気胸」に対して治療を行った2歳以上の患者の診療録を後方視的に参照し,性別などの患者背景と,胸部単純X線やCTの所見,治療とその結果,再発回数による治療成績の変化を抽出し検討した.結果は全て中央値(四分位範囲)で記載する.

    【結果】対象期間中に46例87件の気胸を認めた.半数の症例は非手術治療で軽快しており,手術を実施したのは21例(46%)33件(38%)だった.術後再発は9/33件(27%),非手術治療後の再発は20/54件(37%)と,手術・非手術治療ともに再発率は高めであった.当院における初回エピソード58件に限って検討すると,初回治療が非手術治療だった36件のうち,29件(81%)は再発後も含め一度も手術を要さなかった.CT所見と再発には相関はなかった.

    【結論】小児外科医が治療対象とする若年者の気胸は手術・非手術いずれの治療でも再発率が高いが,非手術治療のみで軽快する症例も多いことから,再発例も含め非手術治療をより積極的に適応し,手術においては再発を想定し再開胸の妨げとなる手技を控えるべきである.

  • 縫 明大, 西堀 重樹, 橋本 さつき, 横山 新一郎, 浜田 弘巳
    2023 年 59 巻 4 号 p. 747-754
    発行日: 2023/06/20
    公開日: 2023/06/20
    ジャーナル オープンアクセス

    【目的】当科で経験した超低出生体重児消化管穿孔例において,その生命予後に関し,術前全身体状態の評価および治療方針と生存例における精神・神経学的予後を中心に検討した.

    【方法】当センターが開設された2007年9月以降,当科で治療した超低出生体重児消化管穿孔例を対象とし,性別,在胎週数,出生体重,手術時日齢,手術時体重,手術時間,術前の腎動脈拡張期血流の途絶の有無,術前のDICの有無,穿孔原因疾患,術式について生存例と死亡例で比較検討した.また,生存例における精神・神経学的異常の有無における性別,手術時日齢,在胎週数,出生体重,手術時体重,手術時間,術後経腸栄養と術後静脈栄養について検討した.

    【結果】手術時日齢,在胎週数,出生体重,手術時体重は死亡例で低値の傾向があった.死亡例において,術前に腎動脈拡張期血流の途絶およびDICを有意に認めていた.精神・神経学的異常について,術後経腸栄養の開始時期が正常例3.50±0.71日,異常例6.43±2.30日と正常例において有意に早く開始されていた.

    【結論】術前の全身状態評価において,腎動脈拡張期血流の途絶の有無およびDICの有無は有効な指標となり得る.正常な精神・神経学的発達には早期の経腸栄養の確立が重要であり,早期の経腸栄養確立の点から腸瘻造設の優位性が示唆された.

  • 星 玲奈, 上原 秀一郎, 浅井 陽, 武藤 衣里, 小野 賀功, 後藤 俊平, 細川 崇, 金田 英秀, 越永 従道
    2023 年 59 巻 4 号 p. 755-763
    発行日: 2023/06/20
    公開日: 2023/06/20
    ジャーナル オープンアクセス

    【目的】我々は循環動態が安定しており初期治療としてnon-operative management(以下,NOM)を選択した外傷性脾損傷(以下,本症)の児に対して,日本外傷学会臓器損傷分類(2008年)(以下,分類)に基づいて安静期間や検査スケジュールを定めた管理を適応してきた.今回,その治療成績を振り返り,安静期間とフォローアップの画像検査の在り方を検討した.

    【方法】2010年1月から2019年12月までに本症と診断された16歳未満の児は11例であった.全例が初療時に循環動態が安定しており入院にてNOMが施行され,この11例を対象とした.受傷機転,分類,合併損傷,入院中に施行された造影CT検査の回数,輸血の有無,遅発性脾破裂や仮性動脈瘤の合併の有無,手術およびtranscatheter arterial embolization(以下,TAE)の施行の有無,ベッド上安静日数,在院日数,転機について後方視的に検討した.

    【結果】受傷機転は転落,スポーツ,交通事故であった.分類ではIIIbが最も多く7例であった.合併損傷は骨折が最も多かった.輸血を要した症例はなかった.入院中に施行された造影CT検査は3~7回,ベッド上安静日数は14~21日,在院日数は21~43日であった.遅発性脾破裂や仮性動脈瘤を合併した症例,手術・TAEが施行された症例はいずれもなく,11例全例が生存退院した.

    【結論】当院で定められた安静管理と検査スケジュールに従ってNOMを施行した結果は良好であった.

症例報告
  • 藤田 拓郎, 小坂 太一郎, 米田 晃, 足立 智彦, 日高 匡章, 金高 賢悟, 江口 晋
    2023 年 59 巻 4 号 p. 764-769
    発行日: 2023/06/20
    公開日: 2023/06/20
    ジャーナル オープンアクセス

    28歳女性.他院にて新生児期に腸回転異常症に対しLadd手術,術後癒着性腸閉塞に対し2度の開腹手術を施行された.28歳時,職場健診にて十二指腸通過障害を指摘され当院紹介された.腹部造影CTにて,胃,十二指腸の拡張,消化管造影では十二指腸球部から造影剤排泄遅延を認め,上部消化管内視鏡では十二指腸の遠位側が盲端様となっていた.癒着などの外的圧迫,捻転による狭窄,通過障害を疑い,開腹癒着剥離術の方針とした.癒着を解除したが十二指腸に外観上の狭窄,捻転は認めなかった.しかし経鼻十二指腸チューブの挿入できず,膜様狭窄を疑った.十二指腸下行脚壁を一部切開したところ,pin holeを有するWindsock型膜様狭窄を認め,十二指腸–上部空腸の側々吻合によるバイパス術を行った.しかし術後,通過障害が遷延し再手術としてバイパス部離断と閉鎖膜切除を行った.その後は通過障害なく経過した.現在,症状再燃なく,外来フォロー中である.

  • 縫 明大, 西堀 重樹, 橋本 さつき, 横山 新一郎, 浜田 弘巳
    2023 年 59 巻 4 号 p. 770-777
    発行日: 2023/06/20
    公開日: 2023/06/20
    ジャーナル オープンアクセス

    今回,我々は非常に稀である横隔膜内肺葉外肺分画症(以下,本症)の乳児例を経験したので報告する.術前診断では横隔膜下の肺葉外肺分画症と診断し,腹腔鏡下に腫瘤摘出を行ったが,術中所見では横隔膜内と診断された.本症において肺葉外肺分画症の診断は腫瘤に流入する大循環系から分枝する栄養動脈が同定できれば比較的容易であるが,その術前の局在診断は必ずしも容易ではない.その特殊な存在部位より,横隔膜上および横隔膜下といった横隔膜に近接する腫瘤として診断されることが多い.治療は手術による摘出が感染や悪性化のリスクから第一選択となる.低侵襲やその良好な視野から内視鏡手術が勧められる.ただ,経腹か経胸かの手術アプローチは術前局在診断の困難さから選択を誤ることがある.それ故,横隔膜に近接した腫瘤の場合には本症を念頭に置いた正確な局在診断に努め,また,術中のアプローチ変更も視野に入れた手術計画が重要と思われる.

  • 岩井 宏樹, 文野 誠久, 髙山 勝平, 金 聖和, 東 真弓, 青井 重善
    2023 年 59 巻 4 号 p. 778-783
    発行日: 2023/06/20
    公開日: 2023/06/20
    ジャーナル オープンアクセス

    前皮神経絞扼症候群(ACNES)は,肋間神経皮神経前皮枝が腹直筋前鞘で障害され,腹直筋外縁に疼痛を認める疾患だが,それ以外の腹壁全体の皮神経に起因する疼痛も含めることがある.今回,ACNES非典型例2例に対して外科治療を行ったので報告する.症例1は12歳女児で右鼠径部の,症例2は15歳男児で左側腹部の慢性腹壁痛を訴え,非典型的ACNESと診断した.保存的治療を行ったが効果は一時的であり,発症からそれぞれ8か月後と2年4か月後に手術を施行した.症例1では鼠径管を開放し腸骨鼠径神経を同定して神経切除を行った.症例2では術前にインジゴカルミン色素を混じたトリガーポイント注射を行い,色素を指標に腹横筋腱膜背側の腸骨下腹神経を同定し切除した.2例とも術後症状が消失した.ACNES非典型例においても,保存的治療の効果が乏しい症例に神経切除が有効な場合があり,今後症例を重ねて治療戦略を確立する必要がある.

  • 西塔 翔吾, 神保 教広, 増本 幸二, 相吉 翼, 佐々木 理人, 千葉 史子, 小野 健太郎, 瓜田 泰久, 新開 統子
    2023 年 59 巻 4 号 p. 784-788
    発行日: 2023/06/20
    公開日: 2023/06/20
    ジャーナル オープンアクセス

    症例は6か月,男児.感冒を主訴に前医を受診し,胸部単純レントゲン写真で右横隔膜挙上を指摘された.CT検査にて右横隔膜ヘルニアの診断となり,胸腔鏡下右横隔膜ヘルニア根治術を行った.術中所見から右横隔膜ヘルニアは有囊性であり,ヘルニア囊が非常に大きく視野の妨げとなったが,容易に牽引できた.ヘルニア囊から腹腔側の肝臓表面の動きが確認可能であったため,腹腔側臓器の巻き込みがないと判断し自動縫合器でヘルニア囊を切除した.このヘルニア囊の切離により良好な視野を得ることができた.さらに縫合予定部が直線化し,ヘルニア門の辺縁が近接したため,鏡視下に横隔膜縫縮が行えた.自動縫合器でヘルニア囊の切除する手法は限定的な条件ではあるが,狭小なワーキングスペースで手術を行う上で有用な選択肢となり得ると考えられた.今後は中長期的合併症や適応に関して検討していく必要がある.

  • 竜田 恭介, 中林 和庸, 山内 健
    2023 年 59 巻 4 号 p. 789-792
    発行日: 2023/06/20
    公開日: 2023/06/20
    ジャーナル オープンアクセス

    症例は1歳女児.月齢7より臍上の腹壁の膨隆を認め,増大傾向にあるため1歳8か月時に当科に紹介となった.臍頭側の腹壁に3 cm大の膨隆を認め,超音波検査,造影CT検査では腹壁内に4 cm大の囊胞性病変と囊胞底部に1 cm大の腫瘤性病変を認めた.腹壁卵黄腸管囊胞を疑い,手術を施行した.手術所見では囊胞壁は脆弱で周囲と強く癒着し,境界は不明瞭であった.囊胞底部に赤色結節状の腫瘤を認めた.囊胞内容液は黄色透明でアミラーゼ値は12,362 IU/ lと高値であった.癒着剥離を行い,囊胞を全摘した.病理検査では囊胞壁は膠原線維,脂肪組織,筋組織からなり,腫瘤部分には小腸粘膜と膵組織を認め,仮性囊胞を形成した腹壁卵黄腸管囊胞と診断した.術後2年が経過しているが,再発は認めていない.

  • 片山 修一, 豊岡 晃輔, 花木 祥二朗
    2023 年 59 巻 4 号 p. 793-798
    発行日: 2023/06/20
    公開日: 2023/06/20
    ジャーナル オープンアクセス

    梨状窩瘻は根本的治療として瘻管摘除術が行われる.瘻管の状態によって再発率が高いこともあり,代替的な治療法として瘻孔入り口を焼灼閉鎖する化学的焼灼術が開発された.しかしながら瘻孔入り口を閉鎖しても瘻管全体が遺残している可能性があった.この度フード付き内視鏡を用いた治療を行い,瘻管を焼灼したことを確認し治療を完遂した.治療後に内視鏡検査と造影検査で瘻孔入り口の閉鎖を,エコーにて瘻管の縮小を確認した.合併症は咽頭痛のみであった.本法は従来の化学的焼灼術に比べ,より根治性を追求した治療法であり,梨状窩瘻に対する治療の選択肢の1つになりうる.

  • 魚住 祐介, 金 聖和, 嶋村 藍, 髙山 勝平, 東 真弓, 文野 誠久, 青井 重善, 古川 泰三, 田尻 達郎
    2023 年 59 巻 4 号 p. 799-803
    発行日: 2023/06/20
    公開日: 2023/06/20
    ジャーナル オープンアクセス

    症例は生後2か月の男児で,胎児期から心奇形と右横隔膜上腫瘤を指摘され,出生後に両大血管右室起始症,肺動脈閉鎖症,動脈管開存症,心房中隔欠損症と診断された.横隔膜上腫瘤は検査所見から悪性腫瘍の可能性は低く,当初は待機的加療の方針であった.しかし生後1か月時の造影CTで,腫瘤は肺分画症病変が疑われた上,右先天性横隔膜ヘルニアも新たに指摘された.本症例は心奇形の治療を進める過程で,肺血流を増やし肺血管床を育てる必要があり,上記のような胸腔内占拠性病変は可及的早期の治療が望ましいと判断された.生後2か月時に胸腔鏡下に右分画肺切除術及び,横隔膜縫縮術を施行した.術中,術後に特記すべき合併症は認めなかった.肺分画症及び遅発性先天性横隔膜ヘルニアに対する手術は,有意な臨床症状がなければ,待機的に施行されることが多いが,本症例のように重症心奇形を伴う場合は,病態に応じた早期手術の検討が重要と考えられた.

  • 小林 完, 藤野 明浩, 古金 遼也, 沓掛 真衣, 森 禎三郎, 狩野 元宏, 高橋 正貴, 米田 光宏, 金森 豊, 義岡 孝子
    2023 年 59 巻 4 号 p. 804-809
    発行日: 2023/06/20
    公開日: 2023/06/20
    ジャーナル オープンアクセス

    Beckwith-Wiedemann症候群(Beckwith-Wiedemann syndrome: BWS)は臍帯ヘルニア,巨舌,半身肥大,新生児低血糖など多彩な症状を呈する先天性疾患である.その特徴の1つとして肝芽腫や腎芽腫などの胎児性悪性腫瘍を発症しやすいことが知られている.我々は乳児期に肝芽腫を発症後,思春期に乳房に線維腺腫(fibroadenoma: FA)が多発した症例を経験した.BWSの原因遺伝子座として11番染色体短腕15.5領域(11p15.5)の関連が知られており,当該領域における種々の異常が腫瘍発生に関連する.BWS児をフォローする際は悪性腫瘍のみならずFA発症の可能性も念頭に置く必要があると考えられる.

  • ―消化器系と呼吸循環器系の現状を中心に―
    飯沼 泰史, 平山 裕, 仲谷 健吾, 内藤 真一, 新田 幸壽
    2023 年 59 巻 4 号 p. 810-818
    発行日: 2023/06/20
    公開日: 2023/06/20
    ジャーナル オープンアクセス

    今回我々は,Long gapの先天性食道閉鎖症に対し,全胃吊り上げ食道再建術(gastric transposition: GT)施行後,10年以上経過した4例について,消化器,呼吸循環器,成長・栄養の観点から現状を報告する.4例の病型はC型2例,A,B型各1例で,全例生後5か月以内にGTを試行した.嚥下と食事摂取法に関する愁訴が,それぞれ3例と2例認められた.また1例で軽度の胃食道逆流があり,全例で慢性胃炎の状態であった.胸部CTでは,拡張した全胃により2例で心肺系の圧排を認めたが,全例心機能に異常はなかった.しかし呼吸機能では2例で肺活量の低下を認めた.栄養・成長面では,全例で身長または体重が標準以下であったが,現時点のQOLは良好であった.GT後は消化器,呼吸器,成長面で問題は残るが,循環器系の問題はなく,嚥下と食事の愁訴に対しても適応可能で良好なQOLであることが判明した.

  • 塚田 遼, 阪 龍太, 高山 慶太, 田附 裕子, 宮村 能子, 佐藤 和明, 奥山 宏臣
    2023 年 59 巻 4 号 p. 819-825
    発行日: 2023/06/20
    公開日: 2023/06/20
    ジャーナル オープンアクセス

    被囊性腹膜硬化症(以下,本症)は肥厚した腹膜の広範な癒着により腸閉塞を呈する疾患であり,腹膜透析の合併症として知られているが,腹膜透析以外に合併することはまれである.今回,われわれは本症をAYA世代横紋筋肉腫の術後化学放射線療法後に経験したので報告する.症例は21歳の男性.19歳時に前医で腹腔内出血を来した膀胱原発横紋筋肉腫(stage IV)に対して大網切除,膀胱部分切除術を施行された.当院に転院後,COGのARST0431プロトコールに準じて化学放射線療法を施行された.化学療法12か月後,放射線療法6か月後に,腸閉塞を発症し保存的加療を行うも改善なく試験開腹術を施行した.腹膜,小腸漿膜は白色の厚い被膜で覆われており,特に高度な癒着を認めた回腸を部分切除した.病理組織学的に中皮下結合組織の線維性肥厚があり臨床経過から本症と診断した.術後6年経過し,本症および横紋筋肉腫の再発なく生存中である.

報告
研究会
あとがき
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